では、電力需要の推移を年間(月別)で検証してみよう。『過去3ヵ年平均月別最大電力需要』(図1)を見ると、電力需要はやはり真夏の7、8月がピークとなっている。エアコン(冷房)使用が集中することが原因なのは言うまでもないだろう。

経済を回しながら今夏のピーク時電力も抑えられる、<br />節電・復興のための「夏休み」対策とは図1 「過去3ヵ年平均月別最大電力需要」と今夏の最大供給力見通し
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  ならばこの時期に企業のエアコン使用をバッサリとカットすれば、その節電効果はかなり期待できるものとなる。

 そこで着目するべきは夏休み、ということになる。企業にとって夏休みは、1年で電力需給が最も逼迫する時期に公然と一斉休業できる、絶好の節電チャンスなのだ。

 今回は、私からも、効果的に節電できる「夏休み対策」のヒントを提案したい。

真夏の「ピーク日」の使用電力を
抑えるための、一斉夏休み

 まずは、「夏休みは全社員一斉にとる」ということ。

 最近では昔のように、お盆周辺に会社全体で夏休みを取るという企業が少なくなっている。「夏(多くは7~8月)の間に通常の有給休暇とはべつに夏季休暇を与えるから、好きなときに消化してください」というスタイルが大多数だろう。夏休みは「会社が休みになる」のではなく、「自分で日を決めて休む」ものになっているのだ。そもそも、夏休みの分散化は悪いことではない。帰省ラッシュの緩和にも寄与している。

 だが「ピーク時の節電効果」だけを考えれば、夏休みは昔の「全社一斉に休む」スタイルにすべき。理由は前回の昼休み対策と同様、ピーク時の会社のエアコンを止めるという考え方にある。

 個人個人がバラバラの休みでは、結局、誰かが出社してエアコンをつけてしまう。それではまったく節電にならない。全社を休みにしてすべてのエアコンを止めなくては意味がないのである。照明、エレベーター等もしかり。前回も申し上げているが、1年間でもっとも電力を使う真夏は、「節」電だけでは足りない。一斉に「停」電で、乗り切らなければならない。

 7、8月という年間電力需要のピーク時に、オフィスを、研究所を、工場を空にする。

 もちろん業種や業務形態によっては対処するのが不可能なケースもあるだろう。それでも対応可能な企業が足並みを揃えて全社一斉の夏休みを実施すれば、かなり大きな規模の節電になることは間違いない。

連続10日以上の
節電バカンスを

 そして「夏休みの期間を長くする」ということ。これも効果が高い。

 冒頭で引き合いに出したソニーの対策は、まさにこれに該当している。どうせ休むのなら、この際、がっつり固めて休んで節電に貢献すればいい。

 フランスでは、ほとんどの人が夏に連続して約1ヵ月の長期休暇(バカンス)を取る。これは法律でも認められている習慣だ。

 日本でも今夏は全社を挙げての長期休暇、1ヵ月は不可能にしても、10日~2週間程度の節電バカンスを採用してはどうか。

 もちろん企業それぞれにさまざまな事情はあろう。ある程度の期間、エアコンだけでなく会社機能を止めることになる。経営者にとって夏休みを長くとると、それだけ経営リスクも高くなる。

 だが今年はいままでの夏とは事情が違う。非常事態なのだ。今夏限定でかまわない。できる限り長い全社一斉の夏休みを検討していただきたい。

 ちなみに、ここでいう「全社」とは、東北・東京電力管轄下にある企業のことだ。ほかの地域にある支社や工場などでは、「輪番休暇」を検討してもいいだろう。休暇時の応対は支社で行う、どうしても休めない社員は支社に出社するといった対策も考慮したいところだ。