伊達マスクが流行っている。風邪や花粉症ではないけれども、マスクを付けることが常態化している人も少なくない。実は、この伊達マスク、ビジネススキル向上を妨げ、ひいてはわが国ビジネスを停滞させてしまうおそれがあるのだ。(リブ・コンサルティング人事部長兼組織開発コンサルティング事業部長 山口 博)
伊達マスクで
表現力演習に参加
2017年春の花粉飛散予測は、日本気象協会によれば「西日本では2倍」、「関東地方はやや少ない」見込みだという。花粉シーズンの到来で、職場でもマスクを付けている人が増えている。ビジネスシーンで身に付けるべきコミュニケーションスキルを分解して反復演習、着実に体得させる「分解スキル・反復演習」を実施したB社では、演習に参加したグループ6人中4人がマスクをしていた。お聞きしてみると、風邪気味の人が1人、花粉症が1人、他の2人は「普段しているから」という理由だった。いわゆる伊達マスクである。
風邪気味の人には、「無理しないで参加してくださいね」とコミュニケーションをとりつつ、表現力演習を進めていく。まずは、2人1組になって、口角を上げる演習だ。伊達マスク組はマスクをはずさないで実施している。続いて、2人1組になって自己紹介をする...ここでもマスクははずさない。次は、ビデオで顔を自撮りしながら、業務紹介をするロールプレイングだ...ビデオ画面を拝見すると、画面の下半分に大きく白いマスクが写っている…これでは、口元の動きや表情はほとんど分からない。
途中から、「表現力の演習ですから、辛くなければマスクを取って演習しましょうね」と全体の場で声をかけるが、伊達マスク組の耳には入らないのか、反応を示さない。6人中4人がマスクをしているグループに近寄って、笑顔で、「差し支えなければ、マスクをとって演習しましょう」と声をかけると、「差し支えが…」というささやきが、伊達マスク組から聞こえた。
これはB社の例だが、演習にマスクを付けて参加する人が増えている。演習だけでなく、多数の人が参加する会議や、1対1の面談などの場合でも、さらには、顧客として訪問した先の企業でも、担当者がマスクを付けているケースに出くわすことが多くなったと思う。