わずか三十数年で8兆円企業へと成長したソフトバンク。多くの企業が日本経済の停滞に苦しむなか、圧倒的な拡大を続けることができたのは、「同時にすべてを試す」という普通は思いついてもやらないし、やれないはずの「奇策」にあった。
ソフトバンクでは今も、6万人超の社員がこの手法を使っている。この手法があるからこそ、孫社長の思いもよらない奇策も実現できるのだ。
でも、それは普通の会社で働く人にも可能なのか? もちろん可能だ! 9年にわたり孫社長の右腕として活躍した元ソフトバンク社長室長・三木雄信氏の話題の新刊『孫社長のむちゃぶりをすべて解決してきたすごいPDCA』から一部抜粋して紹介する。

「あること」を決めるだけで、思考が倍速化する

 実行の決断と同時に孫社長はあることを決めます。

 それは高速PDCAの「大きな目標」にあたる最終目標です。ソフトバンクでは「ゴール」と呼んでいました。

 ADSL事業で言えば、こうなります。

「ADSL事業に参入して、まずは1年で100万人の顧客を獲得するぞ!」

 そのために、まずモデムを100万台発注しました。もはや発注してしまったのですから、不退転の決意です。これがゴールです。

「Plan(計画)」ではなく、「目標+実行」からソフトバンクではすべてが始まるのです。

 こうして最初にゴールを設定し、実行すると決めれば、「では、資金はどうやって調達するか」「人はどれくらい集めるか」などを考えざるを得なくなります。

 人はプレッシャーがかかった状態で考えると、思考が倍速化します。

 つまり、めざすゴールが決まっていると、どんなに不利な状況であっても、そこから逆算して「いつまでに何をやるべきか」を具体的に考えるようになるのです。

 仕事の締め切りが迫ってきて、プレッシャーはピークに到達。ない知恵を何とか絞り出し、無理やりにでも計画を動かす。そんな経験は誰もがあると思います。

 この仕組みがあるから、ソフトバンクは新しいことにも積極的にチャレンジできるのです。