全国一律の介護保険制度からの大転換

 この4月から全国の市町村自治体で介護保険の「新総合事業」が始まった。現行の介護保険制度では、財源難と人手不足が深刻になるめ、自治体に一部サービスの運営を委ねることにしたものだ。

 運営基準などを個々の自治体が決める。全国一律の介護保険制度からの大転換である。「地域の異なる実情に応じられる」と厚労省は胸を張る。

 75歳以上の後期高齢者になると心身に障害が生じるのが一般的で、団塊世代が75歳を超えるのは2025年。その時に備えて着手された。団塊世代は首都圏や近畿圏など大都市部に集中しているが、全自治体が新事業に取り組むというのがいかにも日本的だ。

 対象となる高齢者は、比較的元気な要支援1・2の軽度者。軽度者をはずせば従来の制度を維持できると見込んだ。第一弾として、在宅サービスの「訪問介護」と「通所介護(デイサービス)」を介護保険制度から切り離す。

「介護予防・日常生活支援総合事業」と命名され、略して「新しい総合事業」や「新総合事業」と呼ばれている。

 4年後の次の次の介護保険改訂時には、訪問リハビリ、福祉用具貸与など他の介護サービスや要介護度1~5の人へのヘルパーの家事援助も外していくと言われる。

 要支援者だけでなく、その前段階の虚弱者を含めて「日常生活で何らかの手助けを必要としている高齢者を普通の地域住民がみんなで支えましょう」、「地域住民が結束し、助け合いの精神で頑張ろう」と耳触りのいいスローガンを打ち出している。

 介護関連の資格を持つプロではなく、「困っているときはお互いさま」の心意気で隣近所の地域住民が手を差し伸べてほしい――。