多くの企業が期待を寄せ、取り組みを進めるIoT。しかし、IoTでデータを集めるだけでは不十分だ。集めたデータをどのように使うかによって、取り組みの真価が決まる。日本企業のデータ活用にはどんな課題があり、ビジネスチャンスを実現するためにはどんな心得が必要なのか。ユビキタスコンピューティング、オープンデータ研究の第一人者である越塚 登・東京大学大学院情報学環教授に聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也、松野友美)
IoTで集めたデータを
どう使いこなせばいいか?
――産業・企業におけるIoTの取り組みは今、どんなフェーズにあるのでしょうか。
IoT的な概念はもともと30年ほど前からあり、2000年代にはユビキタスコンピューティングと呼ばれました。機器などに超小型チップを付け、センサーネットワークによりモノや人に関する情報を収集するという取り組みは、当時から行われていました。
IoT時代に入り、企業が目指すべき新しい姿は、集めたデータをオープンにし、水平的に産業・企業間で活用する「オープンIoT化」です。しかし、IoTの仕組みでデータを集めることまではやっても、それをオープンにして成功している事例はまだあまりありません。
――なぜ、オープンデータ化が進まないのでしょうか。
多くの企業が、収集したデータを自社内だけで垂直的に使うことが、ビジネス上の競争優位につながると考えているからではないでしょうか。ただ、オープンデータ化に新しいビジネスの創出につながるメリットがあることは、認知され始めています。
――オープンデータ化によって、どんなメリットが生まれるのでしょうか。
よい例が鉄道の運行管理システムです。日本の鉄道は車両にも線路にもセンサーが張り巡らされていて、車両が今どこを走っているのか、どれくらいの人が乗っているのかという情報が全てわかる。もともとIoT的な仕組みがあるのです。それだけでは、鉄道会社が運行管理に使うためだけの情報で終わってしまいますが、それをオープンにすることで、様々なことができるようになります。