申し遅れましたが、私は、大学を出てすぐに都内のソフトウェア開発会社に就職し、開発現場でプロジェクトマネージャーなどを経験した後、ITコンサルタントに職を変えました。そこで、先ほどの裁判例のようなトラブルプロジェクトを多数経験し、解決に尽力してきました。

また、東京地方裁判所や東京高等裁判所のIT案件専門の調停委員として8年間、IT訴訟の解決のお手伝いをさせていただきました。調停委員時代に、トラブルを裁判に発展させずに解決に導いた確率は9割以上。現在は経済産業省のCIO補佐官として、政府の基幹系システムのプロジェクトに携わっています。

さまざまな立場から大小問わず 70 を超えるプロジェクトに携わり、システム開発で起きるあらゆるトラブルに触れてきた経験から私が強く感じるのは、「システムの開発は、発注者とベンダーの協業である」ということに尽きます。

『システムを「外注」するときに読む本』 細川義洋:著
価格(本体):1980円+税 
発行年月:2017年6月 
判型/造本:A5並製、352ページ
ISBN:978-4478065792

本書で詳しく紹介するように、発注者に求められる役割の中には、ベンダーに言われるまでもなく能動的に実践しなければいけないものが数多くあります。その役割を把握していなかったり、怠っていたケースでは、高い確率で失敗していました。

もちろん、私がお付き合いしてきた発注者企業の中には、自身の責任をしっかりと自覚され、 十分に役割を果たしている方もたくさんいました。 しかし、全体でみると、そうした発注者は少数派だというのが私の印象です。