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AI時代を豊かにする「朝飯前」の仕事【孫泰蔵】江戸時代、食事は1日2食が主流であったという。当時の浮世絵には庶民の質素な食事の様子が描かれている。孫泰蔵氏は「朝飯前」のボランティア活動が江戸の社会を支えたと指摘する。Photo:「美盾十二史 申与次郎(歌川国芳)」国立国会図書館所蔵

 人工知能(AI)の発展によって、1日の労働時間が3、4時間になるというお話を前回、前々回でしました。労働時間が短くなるので、「これから、何をして生きていけばいいのか」とか、「暇で仕方がない」と不安になる人がかなり増えることでしょう。

 それに対する明快な答えといいますか、提案があります。「市民としてさまざまな社会的活動に関わっていく」ということです。

 これは、Civic Engagement(シビックエンゲージメント=市民参加)といわれます。地域のボランティア活動やNPO(民間非営利団体)活動など、社会的な活動を行うことで自らの居場所を見つけられるのではないでしょうか。

 もともと日本はボランティア活動が評価されにくい社会だと思います。東日本大震災から6年以上たちましたが、今も休みを利用して支援活動に取り組まれている方々がいます。そういう方々に限って「本業でもないですし」とか、「素人ですから」と言います。ボランティア活動のため、周囲からの評価が得られにくいようです。

 でも、僕から見たら、彼らは6年も一つの支援活動をしてきたので、もはやエキスパートと呼べる存在です。問題なのは、「お金を得ている仕事だけが本業である」と思い込んでいることなのです。