羽田空港に定期国際便が復活して1年経つが、深夜早朝発着枠の利用が進んでいない。海外エアラインが採算を取れないことが原因になっている。
昨年10月、羽田空港に4本目の滑走路と国際線ターミナルがオープンし、発着枠が年間30.3万回から39万回に増えた。同時に、国際定期便が就航できるようになった。
だが、国際線のうち昼間の発着枠を使えるのは、中国や韓国など近距離のアジア方面のみ。米国や欧州に行く長距離国際線は、航空機の発着時間が午後11時~午前6時に限定された。現在、深夜の発着枠は3万回だが、利用は半分の1.5万回にとどまっている。
原因の一つは、深夜では空港までの足がないため集客がままならないこと。東京モノレールは午後11時37分が終電である。神奈川県や東京都南部など、羽田近隣に在住の人ならともかく、埼玉県や千葉県など遠方からの利用では前泊が必要になる。
そして、もう一つの理由がオペレーション上の問題だ。
羽田を拠点とするJALやANAなど国内航空会社は問題ないが、羽田が“アウェイ”となる海外エアラインはオペレーションがうまくいかないのである。
通常、エアラインが空港に航空機を駐機させる時間は2時間程度。航空機の稼動が売上高を生み出すため、航空機を寝かせないことが重要だからだ。ところが、発着時間が午後11時~午前6時に限られると、航空機を寝かせる時間が長くなり、採算を取ることが難しくなる。
東京都心に近い羽田から長距離国際線が飛ばせるようになったとあって、当初、期待を抱いていたエアラインも多かった。しかし、需要やオペレーションなどから算盤をはじくと、採算性は厳しい。当初就航を予定していたエア・カナダや独ルフトハンザ、エールフランスなどは現在就航を見合わせている。
だが、こうした厳しい条件下でも羽田の深夜枠を使って欧米路線を飛ばしている外資エアラインも存在する。米デルタのロサンゼルス線、英ブリティッシュ・エアウィズ(BA)のロンドン線などがそうだ。
両者ともに、羽田深夜便の搭乗率や採算性は開示しないが、例えば、BAが羽田―ロンドン往復で3万4000円といったキャンペーン価格を出しているところを見ると、そう好採算ではないことが伺える。
それでもデルタやBAが深夜便を就航させているのには別の狙いがあるようだ。航空業界の関係者は、昼間の発着枠利用の可能性を指摘する。
2013年から14年にかけて、羽田空港は段階的に発着枠が拡大するが、この際に長期国際線に昼間枠が割り当てられる可能性がある。羽田から昼間に就航できれば、今度は一転してドル箱に変貌する可能性があるのだ。
発着枠の振り分けは、実績を持つエアラインに優先的に配分されやすい。現在の深夜便利用は、それまでの辛抱というわけだ。
今は我慢の深夜便がドル箱に化けるか否かは、13年以降に長距離国際線に昼間枠が充てられるかどうかにかかっている。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 須賀彩子)