わずかな睡眠不足が積み重なる
「睡眠負債」で生活や仕事の質が低下
「私の『睡眠負債』は莫大なモノになるわね」
睡眠不足が招くリスクを取り上げたテレビの健康バラエティー番組を見ながら、真奈美さん(仮名・46歳)はひとりごちた。
睡眠負債とは、わずかな睡眠不足がじわじわと積み重なって、大きな借金のように増えてしまった状態。「債務超過」に陥ると、生活や仕事の質が低下するだけでなく、うつ病、がん、認知症などの疾病につながる恐れがあるという。
昔から、「人間、寝だめと食いだめはできない」と言われているが、「寝不足」は溜められるらしい。
アメリカの大学が行った研究によれば、6時間睡眠を2週間続けた被験者グループの脳の働きは、2晩徹夜したグループと同程度まで低下しているという。だが、日本人のおよそ4割は睡眠時間が6時間未満で、慢性的な「ちょい寝不足」と言われている。その場合脳は、何晩徹夜した状態になるのだろう。
「必要な睡眠時間には個人差があるっていうから、6時間も眠れていたら大丈夫なんじゃないの。まったく、この手のテレビっていたずらに不安を煽るよねー」
再びテレビに突っ込みを入れるが、実はじわっと不安になっている。
なにせ彼女は、記憶にある限り満足に眠れたことがない。寝付きが異常に悪い上に、眠りも極端に浅い。だから睡眠は常に細切れだ。夜中に最低3回は目が覚め、布団の中にいても落ち着かないのでトイレに行くが、たいして尿は出ない。
学校に通っていた頃は、授業中も眠くて眠くて仕方なかったが、それ以外で困ることはあまりなかった。むしろ、「お手柄」を立てたことさえある。