ロボットとの融合
~人間がサイボーグ化する未来
私は、大学院でロボットに関して学び、現在も大学で、移動ロボットやパーソナルモビリティ(PMV:Personal Mobility Vehicle)などのロボティクス技術を応用した機械の研究開発に携わっています。
パーソナルモビリティというのは一人乗りのコンパクトな移動支援機器のこと。セグウェイのような健常者が乗るものもありますし、歩行困難な人たちが手軽に使えるような乗り物もあります。
2005年の愛知万博は、別名ロボット博と言われるほど多くのロボットが出展されました。私も「チャリべえ」という移動のための実演ロボットを中心になって開発し、出展しました。
そして2016年には、開発した不整地移動能力の高い一人乗り車両(車椅子)で、サイバスロンという国際競技会に出場、「パワード車椅子」部門で4位入賞を果たしました。
サイバスロンというのは、パラリンピックとは違い、技術を用いて障害を克服し、その技術を身に着けたうえで競い合う競技です。
日常生活で実際にバリアになっている場面がタスクとして設定されており、例えば義手部門では「洗濯物を義手を使って干す」こともタスクの一つです。「人と機械の融合」、つまりサイボーグ化がテーマで、ロボット開発をベースに世界中が挑戦しています。
私は、北京パラリンピック車椅子レースの金メダリストの伊藤智也氏とチームを組み、パワード車椅子部門のレースに参加したのですが、他にも「パワード義足」「エクソスケルトン(外骨格)」など計6種目の競技が行われました。
中には、「走れ」「止まれ」と考えるだけで、脳波でゲームのキャラクター(アバター)を動かす「ブレイン・コンピューター・インターフェース(BCI:Brain Computer Interface)」という部門もあります。手足が不自由でもスムーズな生活ができる、そんな未来がすぐそこまでやってきている、そんなことを実感できる大会です。
人と機械の融合、つまりサイボーグ化と聞くと、ともするとものものしく響くものですが、超高齢社会を迎える日本においては、特に最後まで自立した生活を送るためにロボットの力を借りる人が多くなるのは間違いありません。
日本ロボット学会理事、和歌山大学システム工学部システム工学科教授。1973年生まれ。東北大学大学院情報科学研究科応用情報科学専攻修了。2007年より千葉工業大学工学部未来ロボティクス学科准教授(2013-14年、カリフォルニア大学バークレー校 客員研究員)を経て現職。 専門は知能機械学・機械システム(ロボティクス、メカトロニクス)、知能ロボティクス(知能ロボット、応用情報技術論)。 2016年、スイスで第1回が行われた義手、義足などを使ったオリンピックである「サイバスロン2016」に「パワード車いす部門(Powered wheelchair)」で出場、世界4位。電気学会より第73回電気学術振興賞進歩賞(2017年)、在日ドイツ商工会議所よりGerman Innovation Award - Gottfried Wagener Prize(2017年)共著に『はじめてのメカトロニクス実践設計』(講談社)がある。