金塊密輸業者の「声」
「売上総利益」は8%だが、経費はいくらかかるだろうか。日本への持ち込みには、LCCなど格安航空チケットを利用する。香港→韓国、韓国→日本ならば、バーゲンセールで片道1万円を切るなど格安だ。
運び屋に主婦を利用していた事件があり、この場合には旅費交通費を負担する対価として運び屋の役割を負わせていたようだ。運び屋になる主婦からしても、薬物などとは違い金塊なので罪悪感が薄かったのかもしれない。金塊密輸業者の仲間内では、「福岡や沖縄の税関の検査は緩い」というのが定評だったようだ。
韓国経由が多かったと書いてきたが、日本の「国際空港の税関」で密輸が相次いで摘発されてきたので、リスクを回避する方法として仰天手口を考えた人たちがいる。それが「内変機」を利用したスキームである。内変機とは、国際線で日本に到着後、「同じ飛行機」で国内線として出発するフライトのことを指す。
1月下旬にニュースとしてリリースされたが、舞台は中部国際空港セントレア。密輸犯グループは、金塊をシンガポールで購入後、台湾の空港に到着。台湾からセントレア空港に到着。搭乗した飛行機の「便器の裏側」に金塊の入ったビニール袋をテープで貼りつけて降機。仲間が同じ飛行機の国内線で搭乗、羽田空港で降機する予定だった。
運が悪かったのか税関職員が有能だったのか。ニュースになったケースでは便所の検査で発覚し、搭乗人のバッグから便器裏に貼り付けてあったものと同じテープが発見されたとのこと。バレるまでの間、数回は成功していたとの供述だった。主犯格の外国人が、愛知県で自動車の輸出業会社を経営していたとのことなので、これまでのフライト経験から、このスキームを考え出すことができたのではないか。
1967年生まれ。東京国税局課税第一部課税総括課、同部統括国税実査官(情報担当)、電子商取引専門調査チーム、課税第二部資料調査第二課、同部第三課に勤務。主として大口、悪質、困難、海外、宗教、電子商取引事案の税務調査を担当。退官までの4年間は、大型不正事案の企画・立案に従事した。2011年、東京国税局主査で退官。現在、税理士。他の著作に「国税局資料調査課」(扶桑社)がある。国税局課税部資料調査課(機能別に派生して設置した統括国税実査官を含む)は、税務署では調査できない困難事案を取り扱う部署である。資料情報及び決算申告の各係数から調査事案を選定、実地調査する。税務署の一般調査と異なり、「クロ」をターゲットにしているので、証拠隠滅や関係者との虚偽通謀を回避する必要があり、原則として無予告で調査を行う。