米国の交渉者は圧倒的な米国の力を背景に、その力を見せつつ、論理的な装いで相手を追い詰める。一方、北朝鮮の交渉の背景にあるのは、形容しがたい怨念と猜疑心、そして論理よりも精神主義である。

 交渉が結果を作るためのプロセスとすれば、相手を説得する必要があるが、そのためには相手の国民性や思考経路を理解することが重要だ。

 核問題の交渉の歴史は北朝鮮に騙されてきた歴史であるとしても、もし米国が力を背景に相手を恫喝するような態度で交渉に臨めば、窮鼠猫をかむ形勢となるだろう。

 朝鮮半島には中国・ロシア・日本に攻撃され蹂躪された歴史がある。交渉を成功させるためには、朝鮮半島の歴史を理解し、上から目線の抑圧的な態度を取るのではなく、むしろ普遍的な交渉原則に従うことが重要だ。

 すなわち、できることとできないことを明確にすること、そこに揺らぎはないことを示すこと、同時に誠意を持って行動することである。

トランプ大統領と金正恩委員長
共通する「不確実性」

 両首脳の「個性」や置かれた状況などを認識することも重要だ。

 北朝鮮では「金王朝」的専制支配が続いている。したがって金正恩委員長の力は強いが、この力を維持していくためには「カリスマ」性がなければならないと思われている。

 小泉元首相の訪朝に向けた私の交渉相手もいつも「金正日委員長は、その時が来れば必ず驚くような決定をする」と言っていたのを思い出す。

 今回も、金正恩委員長を直接、巻き込まないと物事は決まらないことは明らかだが、金委員長もカリスマ的支配のためには「大国と相手をして対等の立場で大きな成果を挙げた」と言う形を国内に示すことも重要と考えているだろう。

 首脳会談次第では非核化という大きな政策転換をする可能性もなくはないという事かもしれない。

 一方、トランプ大統領も同じような傾向を持った異色の大統領だ。