
米国は変質、ロシアとの距離は一段と遠く
当面の課題は米中貿易戦争へのスタンス
米国、中国、ロシアという三つの大国を軸に展開してきた国際関係の構造は変わりつつある。
従来、日本は、この三つの国の中で、米国との間では人権尊重や法の支配といった民主主義的価値を共有し、また安全保障などの戦略的利害も共通の同盟国として、多くの場合に行動を共にしてきた。
「世界の工場」として台頭してきた中国とは隣国であり古くから文化交流もあるが、共産党の一党独裁で人権や法の支配といった民主主義的価値を共有せず、中国が覇権を求めるならば、これを米国と共に阻止するというのが日本の立場だ。
ロシアも隣国ではあるが、米国に次ぐ軍事大国であり、日本は平和条約が未締結で北方領土問題も抱える。冷戦の終了時にも、ロシアの政治的変化を欧米ほど肯定的に捉えたわけではなかった。
しかし、この数年来の米、中、露、それぞれの国際関係や安全保障の姿勢の大きな変化により、日本は外交的スタンスを変えていかざるを得ない。
ロシアによるウクライナ侵略は、国際連合(国連)安全保障理事会常任理事国が、国連を中心につくってきた規範である武力による侵略の禁止を真正面から破るものだった。日本にとっては北方領土問題とエネルギーという二つの課題はあるが、ロシアとの距離は一層遠のいたと言えよう。
深刻なのは、米中対立の激化の一方で、米国はトランプ政権が「米国第一」のもと、自国利害優先の外交、安全保障政策を前面に打ち出し、従来、米国が中心になって進めてきた国際秩序やルールから離れ、古くからの同盟国や友好国との関係悪化もいとわないことだ。
世界は米、中、露の3大国の力によるせめぎあいの状況に変わり始めている。とりわけ日本にとって深刻な課題は、貿易戦争が激化する米中に対する外交スタンスだ。