
従来の米国とは違う「トランプ米国」
米ロ首脳会談でも「取引」重視!?
トランプ第2次政権発足後200日を超えたが、高関税政策やウクライナ停戦交渉、ガザ戦争へのアプローチを通じてトランプ外交への懸念はますます強まる。民主主義的価値への思い入れは薄く、アメリカ第一主義に基づく「取引」への傾斜には大きな戸惑いを感じる。「法治」から「力の支配」に戻ったかのようだ。
世界が注目したウクライナ停戦を巡るプーチン大統領との首脳会談も、トランプ大統領の「真剣度」を疑わざるを得ないものだった。
国際法が禁じる武力侵攻で他国領土を支配し続けるプーチン大統領をレッドカーペットで迎えた“演出”はともかくとして、会見後の記者会見や欧米メディアなどが報じた会談内容からは、領土割譲を求めるプーチン大統領に同調するような姿勢や、ウクライナからのロシア軍の撤退よりも大国間でお互いの国益確保で「取引」するかのような印象だった。
会談後のSNSへの投稿では、従来、求めていた即時停戦ではなく、領土問題などを含め包括的な和平合意を一気に目指す方針転換を表明。これもロシア側の意向に沿った考えといえる。
時に過ちはあったが、民主主義国のリーダーとして人権や法の下の平等などを掲げ、戦後の国際社会を前に進める役割を担ってきた従来の米国とは大きく違う。
日本にとって米国との関係をどうとらえるかは重要な課題であり続けたが、冷戦終了後、対米従属の度合いはむしろ強まってきた。だが、ここらで外交の基本戦略を改めて練り直し、「トランプ米国」のもとでの外交政策を見直す必要がある。
その際のキーワードは、「アジア外交の復権」だ。