忖度社員が会社をダメにします写真はイメージです

経営者は「忖度社員」を昇進させたくなるもの

小宮一慶・小宮コンサルタンツ代表小宮一慶
小宮コンサルタンツ代表

 安倍政権をめぐる一連の報道を通じて、「忖度(そんたく)」という言葉が2017年の流行語になりました。「忖度」という行為そのものは必ずしも悪ではないのですが、社長が周囲に「忖度社員」ばかりをはべらせるようになると、会社は悪い方向へ向かいます。

 社長の仕事である経営とは、3つの要素から成り立っています。(1)企業の方向づけ、(2)資源の最適配分、(3)人を動かすという要素です。企業の方向付けは「何をやるか、やめるか」を決めることで、もちろん、それはとても大切なことですが、それがある程度できていたとしても、ヒト・モノ・カネという資源の最適配分には多くの経営者が悩むことになります。

「頭がいい」と自負している経営者は、企業の方向付けさえ適切にできれば、資源の最適配分、つまり、ヒト、モノ、カネを方向付けに合わせて簡単に最適に配分できると思いがちです。しかし、実はそれがとても難しい。多くの中堅・中小企業の社長を見てきたうえ、私自身も23年にわたって小さな会社を経営しているのでよく分かるのですが、会社のお金の使い方や、人事や昇給には「公私混同」「私利私欲」が働きがちです。とくに、自分をちやほやしてくれる忖度社員をかわいく感じて、昇進・昇給させたくなるものなのです。

 そんなことはないと反論したくなる経営者も多いと思います。ただ、社外取締役として、また、顧問やコンサルタントとして、多くの会社に関わり、役員会や会議にも出席している経験から言えることは、やはり「社長の近くにいる社員は出世する」ということです。

 社長の周りに優秀な社員を置いているから出世が早いと言ってしまえばそれまでですが、現実には同じような実力を持つ社員でも、社長に近いところで働いている人と地方の現場で働いている人では、出世のスピードが違うことが珍しくありません。