2017年、Forbesによる「アジアを代表する30才未満の30人」に、 メディア・マーケティング・広告部門で唯一の日本人として選出された、レシピ動画サービス「クラシル」の運営などを手掛ける25歳の経営者・堀江裕介氏。尊敬する人物はサッカーの本田圭祐選手だという堀江氏は「5年でクックパッドを超える!」「20代で1000億円企業」「孫正義を追い越す!」など数々の“ビッグマウス”でも話題になる存在だが、実際に「クラシル」は17年8月にはレシピ動画本数が世界一に、同年12月にはアプリが1000万DLを超える等により日本最大のレシピ動画サービスになるなど、経営手腕にも注目が集まっている。着実に業績を伸ばし続ける25歳の経営者。新時代を担う若き経営者は、今、何を考えているのか、聞いた。

「クラシル」をレシピ動画世界一にした25歳が一番恐れること堀江裕介(ほりえ・ゆうすけ)/dely代表取締役・CEO 平成4(1992)年生まれ。群馬県出身。2014年4月、慶應義塾大学在学中にdely株式会社を設立。フードデリバリーサービス、キュレーションメディアを立ち上げるが、撤退。2度の事業転換を経て、2016年2月よりレシピ動画サービス「クラシル」を運営。2017年8月にはレシピ動画本数が世界一に、同年12月にはアプリが1000万DLを超えるなど、クラシルを日本最大のレシピ動画サービスに成長させる。

会社を大きくすることで「魔法使いのようなパワー」を持ちたい

――「(料理レシピサービス最大手の)クックパッドを超える」「(ソフトバンクグループ代表の)孫さんを追い越す」という話はいろんなメディアでも話しているとは思うのですが、そもそも堀江さんは「どこを目指しているのか?」「実現したいゴール」というものはあるのですか?

堀江 それはよく聞かれる質問なんですが、とにかく以前は具体的な数字を追いかけるということをひたすらやっていました。「具体的な数字にすればするほど実現する」と思っていましたから。

 でも、最近は数字というより「とにかく影響力を持ちたい」という思いが強いです。「自分が何かやりたい」「誰かを助けたい」と思ったときに、それをやれるだけの影響力を持っている。「そういう自分でありたい」という思いが根底にあります。

 たとえば、東日本大震災ような大災害が起こったとき、孫正義さんと僕とでは発揮できる影響力が全然違うわけです。「プロ野球チームを持ちたいな」と思っても、それが買えないっていうのはすごく悔しいことですし、楽天(会長兼社長)の三木谷浩史さんは癌の研究に投資されていますけど、もし僕の身内が癌になって「自分に何ができるのか?」というとき、「何もできない自分」というのがとにかく許せないんです。

――会社として「何かを実現したい」というゴール、ビジョンがあるというより、どちらかというと、その時々に応じて「何かできる自分でありたい」「それだけの影響力を持っていたい」というのが堀江さんの思いなんですね。

堀江 まさにそうです。結局、僕らは資本主義の中で生きているので、会社を持つとか、大きくするというのは「影響力を持つ」ということだと思っています。よく僕は「魔法使いのようなパワーがある」という言い方をするのですが、会社を経営して、会社を大きくすることで、そんな「魔法使いのようなパワー」を持ちたい。それがゴールというか、僕が目指しているところです。

ビジョナリーな会社ほど「イノベーションのジレンマ」に陥りやすい

――近年は「ビジョナリーカンバニー」であることが大事だと言われがちで、会社として「実現したい未来」とか、「解決すべき課題」ということを具体的に見据えていく会社も多いのですが、堀江さんの考えは少し違うと?

堀江 おっしゃる通りで、僕にとって、会社を経営する上での、特定のビジョン、テーマというのは決まっていません。