私たち現代日本人が、
『失敗の本質』を読むべき3つの理由

 私たちが現在『失敗の本質』を読むべき理由はいくつも挙げることができますが、特に大きな理由を以下に3つ記載します。

(1)大震災と原発事故が教えた日本的なリスク管理の危険性

 コンティンジェンシー・プラン(万一の事態に備えた計画)が不在であることは日本軍と現代日本組織に共通する大きな欠陥です。変化の激しい時代に、適切なリスク管理ができないことは、今後さらなる危険を生み出すことにつながります。「想定外」という言葉が、不適切なリスク管理の免罪符となる状況は、そろそろ終わりにすべきではないでしょうか。

(2)日本企業の劣勢、突破口が見えない閉塞感の時代

 過去に世界市場を席巻した日本企業が、苦戦・敗北をしています。しかし、日本企業も日本人も努力を怠っているわけでは決してありません。だからこそ、既存の戦術に固執して無残に敗北した、日本軍と同じ失敗を疑う必要があるのです。

 以下は『失敗の本質』で紹介された2つの概念です。

シングル・ループ学習 = 問題の構造が固定的だと考えること
ダブル・ループ学習  = 問題の構造は変化することもあると考えること

(例)前者は「高い技術」のみがビジネス唯一の成功要因だと盲信すること。
(例)後者は「技術」以外にもビジネスの成功要因があると考えることです。

 日本企業の閉塞感は、ダブル・ループ学習ができないことに最大の原因があるのではないでしょうか。ある努力を続けて結果が出なければ、その努力は問題解決の鍵ではないと判断すべきなのです。

(3)日本の歴史上、最大の悲劇かつ失敗を生んだ組織上の歪み

 戦闘員、民間人を含めて300万人以上の日本人が亡くなった大東亜戦争。開戦から一時の快進撃を経て、転がり落ちるように敗戦を迎えた日本軍には独特の組織的な歪みや欠陥が存在していました。

 順調に物事が進むとき、日本軍は快進撃を続けましたが、変化を体験するたびに硬直的な思考で成果の出ない作戦を繰り返し現場に強要し続けて、敗北を早めました。また日本軍上層部の官僚主義は優れた現場能力のある人材を遠ざけ、失敗した無能な人物の責任も追及しませんでした。組織の歪みが是正されないことで、大きな悲劇が生まれたのです。

 とても残念なことですが、3点のいずれも私たちは「克服できた」実感がまるでありません。戦後70年近くを経た今こそ、日本は過去の弱点を克服し、同じ失敗から卒業すべきではないでしょうか。