日本人はなぜ、追いつめられると戦略思考ができなくなるのか。旧日本軍の敗戦から今日の企業不祥事・社会問題まで、今も昔も日本的組織が抱える問題には共通点が多い。教条主義、反省部屋、員数主義、上意下達、言葉狩り、責任逃れ……問題解決をはばむ「日本病」の正体とは? 15万部のベストセラーとなった『「超」入門 失敗の本質』の著者が、日本軍の敗因を分析した名著を読み解く。(この記事は、2012年4月5日に公開された記事を一部加筆修正したものです)
『失敗の本質』が指摘した、日本的組織の弱点
「いかなる軍事上の作戦においても、そこには明確な戦略ないし作戦目的が存在しなければならない。目的のあいまいな作戦は、必ず失敗する(中略)。本来、明確な統一的目的なくして作戦はないはずである。ところが、日本軍では、こうしたありうべからざることがしばしば起こった」(文庫版、P268)
上記は1984年に発刊された、『失敗の本質』の第2章からの抜粋です。日本的組織論・戦略論の名著である書籍の言葉は、現代日本の問題、巨大企業の不祥事をそのまま予言しているように響きます。
想定外の変化、突然の危機的状況に対する日本の組織の脆弱さは、私たちが今まさに痛感するところです。名著にズバリ「予言された未来」を現代日本は体験しているかのようです。
その『失敗の本質』が今、再び脚光を浴びています。同書は初版以降33年間、毎年売れ続けている驚くべきロングセラー書籍ですが、2011年の大震災後は有識者の記事でも多く引用されました。また、2016年には新東京都知事となった小池百合子氏が同書を座右の書として言及したことで、改めて多くの注目を集めました。
かつて世界市場を席巻した日本製品と日本企業が販売競争に負け、出口の見えない閉塞感と業績。最近では巨大企業の不正発覚から、都庁の意思決定機構の不透明さ。これら日本的組織原理による失敗や破綻、不祥事が改めて『失敗の本質』を手に取る読者を増やしているのです。