フェイスブックは現代の「聖書」を目指す?

 また、現在のような疎結合のソーシャルネットワークは、究極的には単純なユーザー基盤の量的規模によって(一定のS字カーブを描きながらも)ビジネス規模が左右されることになる。

 フェイスブックを始めとして、そのマネタイズモデルが広告ないしフリーミアムモデルであることがその背景にある。

 ツイッターの株価が低迷しているのも、全世界的にツイッターがユーザー獲得に苦戦していることが最大の理由であり、フェイスブック自体もまだまだユーザー数を増やしているとはいえ、当然ながら天井はある。

 いかにそこから脱して、ユーザー一人当たりの価値を増やすかは、彼らにとって喫緊の課題である。

 ソーシャルメディア以前の「ネットワークビジネス」の代表として、アムウェイを思い出す人も多いだろう。それ以前なら、宗教も、例えば「聖書」や「宣教師」のような「メディア」プラットフォームに乗ったネットワークビジネスと言えよう。

 ザッカーバーグはイベントの場で、まさに教会での人々の自発的なチャリティ活動について触れた。

 ザッカーバーグによると、これはもちろん宗教心からきていることもあるが、そこにコミュニティがあり、人々は何かしら貢献することによって、自分の存在価値を見出し、その上で人とのつながりを強めたいという先天的な欲求があるからだという。

 まさに、フェイスブックが狙っているのはこれだ。「インフォメーション」技術を最大限に活かして、かつて「聖書」や「宣教師」が担っていたポジションを取りに行っているのである。

 ザッカーバーグは同じイベントの場で、ユーザーが自分に適したコミュニティを見つけることを助けるAIツールを導入したことも発表した。

 このAIツールによりフェイスブックを通じて新たにフェイスブックが意味があると認めるコミュニティ(※)に参加するユーザーを50%増やすことができたと、その成果についても語っている。

具体的にはアルコールや薬物依存症の自助グループやDV問題を安全に語り合える女性だけのグループなどをフェイスブックは「意味があると認めるコミュニティ」としている。

 わざわざミッション・ステートメントを変更してまでの宣言。今後、フェイスブックも自社プラットフォーム上でのプロアクティブなコミュニティ形成施策に多くの投資を行っていくだろう。

(この原稿は書籍『破壊――新旧激突時代を生き抜く生存戦略』から一部を抜粋・加筆して掲載しています)