ほうきを手に「人類を月に送っている」と答えた管理人

 アメリカ第35代大統領のジョン・F・ケネディの、こんなエピソードをご存じだろうか。

 ケネディ大統領は、NASA宇宙センターを訪れた時に、ほうきを手にした管理人に「何をしているのですか?」と尋ねた。すると彼は「人類を月に送る手伝いをしています」と答えたという。

 つまりこの管理人は、自分の所属する組織が果たすべき役割(ミッション)をしっかりと理解した上で日々の業務に励んでいたのだ。このようなミッション意識を持つか持たないかで、同じ業務でも得られる充実感や成果が違ってくるのではないだろうか。

 このエピソードが注目されたのは、フェイスブックの共同創業者で現CEOのマーク・ザッカーバーグ氏がスピーチに引用したからだ。2017年5月25日、自らは中退したハーバード大学の卒業式スピーチでのことだ。

 スピーチでザッカーバーグ氏は、このエピソードをもとにミッション意識の重要性を訴えた。彼の親世代の頃には、ミッション意識は仕事場や教会などのコミュニティで自然に植えつけられた。だが現代人は、コミュニティへの帰属意識が弱まっている。そのために、ミッション意識を持つ人が少なくなっていると、ザッカーバーグ氏は指摘する。

 彼はそうした認識から、後輩の卒業生たちに「世界規模のコミュニティを築き、すべての人がミッション意識を持てる世界を再創造しよう」と呼びかけたのだ。