フェイスブックは2017年にミッション・ステートメントの変更を発表した。それは「コミュニティづくりを応援し、人と人がより身近になる世界を実現する」というもの。コミュニティ作りがビジネスの課題なる今、フェイスブックが進もうとしている道から何が読み解けるか?グーグル、ソフトバンク、ツイッター、LINEで「日本侵略」を担ってきた戦略統括者・葉村真樹氏の新刊『破壊――新旧激突時代を生き抜く生存戦略』から、内容の一部を特別公開する。落合陽一氏推薦!
※本記事は著者の個人的な見解であり、本文中で取り上げている企業の公式見解ではありません。

「一緒にコミュニティをつくる」
――疎結合で結ばれた人を密結合させる

 フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOは2017年6月、シカゴで開催したフェイスブックグループのリーダーを対象とした「Facebook Communities Summit」と称する第1回のイベントで、同社のミッション・ステートメントの変更を発表した。

 従来のフェイスブックのミッション・ステートメントは、

“Making the world more open andconnected”(世界をよりオープンでつながったものにする)

であった。

 しかし、この変更によって、新たなミッション・ステートメントは、

“Give people the power to build community and bring the world closer together”
(コミュニティづくりを応援し、人と人がより身近になる世界を実現する)

となったのである。

 フェイスブックを始めとしたシリコンバレー企業にとって、ミッション・ステートメントは、自らのバリュー・プロポジション=存在価値を規定するものとして、極めて重要な存在である。それを変更するというのは、恐らく私たちが想像する以上の意味を持っている。

 全世界を対象としたMAU(Monthly Active Users)で20億人以上と圧倒的な数のユーザーを抱え、文字どおりネットワークのハブのポジションで、世界で最も多くの「構造的空隙」を押さえる企業である。広がりという点では他の追随をまったく許さない存在であるにもかかわらず、このようにわざわざ変更したのはなぜか?

 ちなみに、構造的空隙とは、シカゴ大学ビジネススクールのロナルド・S・バートが提示した理論である。その基本的な考え方は、「企業が競争優位を確立するためには、多様な情報を獲得できる組織にする必要がある」というものだ。

 構造的空隙とは、ネットワーク上で、重複しない接点同士の距離を意味し、簡単に言えば、ネットワークのハブになった者が競争優位に立つことができるということだ。

 では、改めてフェイスブックの新しいミッション・ステートメントを見てみよう。ここでは、ザッカーバーグが新しいミッションに込めた想いをより明確化するために、英語のステートメントに注目したい。

 Give people the power to build community and bring the world closer together.

 なんとなく、現在私が在籍するLINEのミッション・ステートメント“Closing theDistance”を彷彿させる。しかし、実は“build community”と“together”がキーと私は考える。

 特に日本語に訳されていない“together”=「一緒に」が重要だ。フェイスブックは、コミュニティづくりをユーザーと一緒になって実現すると言っているのである。

 これは、単純に人々がつながるためのツールを提供しておきさえすれば良い、というプラットフォームにありがちな考え方から一歩進んで、フェイスブック自体が積極的に人々のつながりをより強めるための行動を取るという宣言である。