昨年に続き、今年も洋画のシェアを邦画が上回ると予測される日本映画界。だが、邦画の中でも好調と言われているのは、テレビ局を中心とする一部の会社のみ。邦画の製作や配給を手がける中小の映画会社は、苦戦を強いられているところも多い。

大橋孝史
大橋孝史(Ohhashi Takafumi)……(ジョリー・ロジャー代表取締役、トルネード・フィルム取締役)。1974年生まれ。22歳でパル企画に入社しプロデューサーに。独立後、2005年にトルネード・フィルム設立に携わり、2007年にジョリー・ロジャーを設立し現職。主なプロデュース作に「父と暮らせば」(03)「湾岸ミッドナイト THE MOVIE」(09)など。近日公開作に「草食系男子。』、「肉食系女子。」(共に10年2月公開)、「喧嘩番長 劇場版~全国制覇」(10年3月公開)などがある。

 そうした中、製作費1000万円程度の低予算映画を次々と製作、劇場公開しているのが、2007年設立のジョリー・ロジャーだ。「上は製作費2億円規模の映画から、下は製作費100万円程度の低予算DVDまで、さまざまな作品を手がけている」と語るのは、同社代表取締役の大橋孝史氏。劇場公開作だけではない。DVD用のドラマから、バスマニアのための『バス天国』といったコアな映像まで、小さなマーケットをターゲットにした作品も数多く製作。販売ルートも開発してきた。

 大きな会社とは異なる視点で事業を展開。創業2年目の昨期は、年商10億円の売上を上げた。「お金がないは、言い訳にならない」と語る同氏に、小さな市場を開拓しつつ、自らもプロデューサーとしてキャリアを積み重ねてきたこれまでを振り返ってもらいながら、そのノウハウについて語ってもらった。

ホラーで
成功の足がかり掴む

 大橋氏は1974年生まれ。1996年に22歳で映画やDVDなどを企画・製作するパル企画に入社し、この業界でのスタートを切る。以来、辞めるまでの8年間で、同氏がプロデュースしてきた作品は、Vシネマが約100本、映画が約50本。退社後はトルネード・フィルム(2005年設立、現取締役)を経て、2007年5月にジョリー・ロジャーを立ち上げ、代表取締役に就任。今日に至っている。

 そんな大橋氏のプロデューサーとしての原点がホラーだ。「パル企画に入る前に1年くらい、レンタルビデオ店で働いていたことがあるんです。暇なんで映画を見まくったり、ビデオのパッケージを眺めていたり──。パル企画で、お金がないけど売れるものは何だろうって考えていたときに、ふと、その当時のことを思い出したんです。