ガソリン、灯油も軒並み高騰
原油価格はどこまで上がるか
「正直、これ以上は厳しいですね」
先日、東北地方に出張した石油元売り企業の関係者は、地元の中小企業経営者や住民から、切実な声を聞いた。彼らが嘆いているのは、東北や北海道などを主な消費地域とする灯油価格の高騰だ。「灯油の需要期が始まる10月にさしかかり、1リットルあたり95円を突破して4年ぶりの高値となった灯油に『生活を圧迫される』と不安を覚える人が増えている」(元売り関係者)という。
灯油ばかりではない。国内のガソリン小売価格は1リットルあたり150円を超え、こちらも4年ぶりの高値水準となっている。
石油製品が値上がりしている背景には、原料となる原油の価格が世界的な上昇トレンドに入ったことがある。原油取引の代表的な指数であるWTI、北海ブレント、中東ドバイ価格は、昨年央の1バレルあたり40~50ドル台を底値とし、今年前半にかけて堅調に上昇。足もとでは70ドル台を推移している。
原油の需要国である日本にとって、価格の上昇は経済のマイナス要因となることが多い。輸送コストや原材料費の上昇により、航空・物流・化学業界などで企業収益の悪化が懸念されている。家計圧迫への不安も広がるなか、個人消費の減退も気がかりだ。原油高がジワジワと「痛手」になりつつある。
このままいけば、100ドルの大台を突破するのではないか――。投資家からはそんな声も聞こえて来る。多くの商品がそうであるように、原油相場は需要と供給のバランスで動く。独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構の野神隆之・首席エコノミストは、「原油の供給が減り需給が逼迫するという見通しにより、価格が下がりにくい状態が続いている」と解説する。
需給逼迫で「先高観」がどうにも消えない背景には、何があるのか。最大の懸念材料は、突発的とも言える地政学リスクだ。米トランプ大統領が制裁を行おうとしているイラン、政情不安と経済崩壊で混乱が続くベネズエラの2大産油国で、原油生産が大きく減る見通しとなっている。「これまで考えていたより状況は深刻」と指摘する専門家は少なくない。