「社会貢献はホントに流行っているのか?」 CSRやソーシャル・ビジネスに関わる人間の間でいつも議論されているのが、実はこのことである。
状況証拠的には流行っているように見える。社会貢献系の飲み会やセミナー、イベントは増えているように感じるし、参加してみればどこも大いに盛り上がっている。イベントの規模も大きくなっている。企業に入ってCSRをやりたいという学生もあいかわらず多いし、東日本大震災に関しては15歳以上人口の76.4%が寄付を行なっている(日本ファンドレイジング協会調べ)。内閣府の調査でも「何か社会のために役に立ちたい」と考える人は69%もいる(2009年度調査)。バブルが始まった1986年は47%だったから、ずいぶんと増えているわけだ。
しかし、社会貢献を特集した雑誌は売れていないし、男性誌に比べて社会貢献関連の特集を組むことが多い女性誌でも、いまだにそれがメインの特集とはなっていない。テレビに関しては、社会起業家を特集した番組が3%しか取れなかったりする一方で、教育支援NGO「Room to Read」の創設者ジョン・ウッドをフィーチャーした番組が16%を取ったり、カンボジアに学校を建てるためのチャリティ番組が24%を取ったりもする。
要するに、社会貢献が流行ってるのか、流行ってないのかよく分からないというのが実情で、分からない理由は社会貢献に関するちゃんとした定量調査が行なわれていなかったからである。マーケティングのプロなら、さまざまな社会現象を見てある程度の推測は可能だが、それは推測に過ぎず、やはりきちんと定量調査をしてみなければ実態は分からない。
「社会に役立ちたいですか?」という質問に69%の人が「yes」と回答したからといって、その回答だけでは意味を成さないし、社会貢献意識が生活行動、消費行動にどう影響を与えているかは分からない。社会貢献がブームですよと言ったときに賛否が分かれるのも、定量的なデータがないのでみんなが自分の感覚で勝手なことを言ってるに過ぎないことが理由である。
「エシカル」とは何か?
新たな言葉が持つチカラ
そんな状況の中、たぶん日本では初めて、本格的な「社会貢献消費意識に関する定量調査結果」が発表された。「デルフィス エシカル・プロジェクト」(以下、エシカル・プロジェクト)編著による『まだ“エシカル”を知らないあなたへ』
(産業能率大学出版部刊)である。
エシカル・プロジェクトは、トヨタ自動車グループ100%出資のマーケティング会社である株式会社デルフィスの社内プロジェクトである。同社はプリウスの宣伝、販促も担当している。そんな背景から、2008年ごろからイギリスを中心に巻き起っていたエシカル・ムーブメントに注目したという。
「エシカル(ethical)」とは聞きなれない言葉だと思うが、「connected with beliefs and principles about what is right and wrong」「morally correct or acceptable」(Oxford Advanced Learner's Dict.より)の意味で、訳語としては「倫理の、道徳上の」「(ある社会・職業集団の)道義にかなった、道徳的な」(ジーニアス英和大辞典より)となっている。「エシカル・ショップ」や「エシカル消費」などという使い方をする。筆者はエシカルを「社会的正義にかなった」という意味で解釈し使っている。