当連載が始まったのが2009年7月21日。今回で2周年記念ということで、読者の皆さまにはお礼と感謝を申し上げます。
さて、「『社会貢献』を買う人たち」というタイトル通り、本連載はいわゆるソーシャル消費を中心にさまざまな社会貢献トレンドを伝えてきた。それはなぜか?社会貢献トレンドが単なる一過性のブームではなく、社会を変え、生活者の意識を変え、企業のあり方を変えていくことが分かっていたからだ。社会貢献のムーブメントに気づかなければ、グローバルで戦うことはもちろん、日本の消費社会の中でも生きていけなくなりますよ。そんなことを伝えようと思い、編集担当の宮田和美氏と企画を練り、連載が始まった。
いまでこそ、社会貢献がトレンドですよと言っても否定する人はいなくなったが、たった2年前ですら多くの日本の企業人は懐疑的で、これほどハッキリしたトレンドに気づかないで日本企業はどうなるのだろう、と危惧していた。誤解を恐れずに言えば、筆者の危機意識は“途上国”に対してでなく、“日本企業”に対するものだったのだ。
あれから2年。たった2年で日本社会は大きく変わったと思う。いまでは多くの日本人が、義援金と支援金の違いを理解するようになったし、ボランティアも冷静に現地状況を判断して行なえるようになった。東日本大震災のインパクトがあまりに大きかったので多くの人は忘れてしまっているが、今年初頭には「タイガーマスク現象」というものもあった。昨年は「正義」をテーマとした哲学書が大ベストセラーにもなった。日本社会は震災前から、ソーシャルな方向に大きく動いていたのだ。
当連載に対する評価も変わったと思う。昨年あたりまでは、初めてお会いする企業の人から「読んでますよ」と言われることが多かったが、今年に入ってからは、「役員に提案する企画書の中で、この連載のネタを使わせてもらってます」と言われることが多くなった。ネタをパクられるのは名誉なことである。もっと多くのビジネス・パーソンにパクっていただけるよう、今後も努力を続けたい。
世界中で起きている
「ソーシャル消費」へのシフト
さて、当連載の2周年を記念するかのように(?)、7月19日、つまりこの記事がアップされる日、アメリカの生活者の消費行動がいかにソーシャルに向かっているかを、膨大なデータ分析と綿密な現地取材で明らかにした書籍が発売される。「スペンド・シフト〈希望〉をもたらす消費」(プレジデント社)である。
著書は、世界最大級の広告代理店ヤング&ルビカム社の関連会社ブランドアセットコンサルティング社社長のジョン・ガーズマ氏。そしてピューリッツァー賞受賞歴のあるジャーナリスト=マイケル・ダントニオ氏の2人。
同著によれば、いまのアメリカの生活者は「見栄や贅沢のための浪費」を嫌い、「より良い社会を作るための消費」にシフトしているという。つまり、いわゆるソーシャル消費、エシカル消費にシフトしているのである。