連邦政府は何をすべきか
中国、インド、ブラジル、東欧諸国などがケイパビリティを育成していくと、イノベーションによる競争は激しさを増す一方だろう。アメリカが優位を保とうとするならば、企業経営のあり方を変えただけでは足りないはずである。政策変更も必須である。
政府によるイノベーション促進策をめぐっては、科学研究や教育への投資、税制、法規制に偏った議論がなされてきた。これらはいずれも重要である。その一方で、製造が議論の俎上に載ることはまずない。これは「製造はイノベーションの一部を成すものではない」という誤った考えによる。これを改めなければいけない。
製造を重視する姿勢を鮮明にすることは、イノベーション政策にとってきわめて重要である。製品設計と密接に関わる製造を海外に移転すると、R&Dまで道連れになるのは必至である以上、なおさらといえる。
では、どのような政策が望ましいのだろうか。まずは、取るべきではない政策について述べたい。我々の見解を申し上げれば、特定分野を優遇するような押しつけがましい産業政策は望ましくない。
また、銀行やベンチャー・キャピタル(VC)の役割を政府が果たそうとすると、ろくな結果にならない。最近も、国や州が融資や助成を行った太陽光パネル・メーカーの経営が傾いたり、アメリカ国内の一部工場を閉鎖したりするというゴタゴタが起こった。
貴重なケイパビリティがひとたび国外に流出してしまうと、助成金ほか特定業界を対象とした支援を通じて自国企業をテコ入れしようとしても、解決には至らない。
ソーラー発電を取り巻く状況を考察するとよい。アメリカのソーラー発電メーカーは、「中国の競合他社は政府の補助金を得ているから、不当に有利な立場にある」と、もっともな主張をしている。ただし、中国企業の優位性はこれだけではない。
ソーラー発電業界は、技術インフラとサプライチェーンのかなりの部分をエレクトロニクス業界と共有しており、エレクトロニクス業界の足場はいまやアジアにある。欧米系のソーラー発電メーカーがこれだけ不利な立場にある以上、政府がどれほど支援したところで挽回へ導くのは難しいだろう。
我々は特定業界に重点を置く産業政策には反対だが、製造関連を含むイノベーションを支援するうえでカギとなるのは、政府の役割だと考えている。歴史は、以下の2つの政策アプローチが効果的であることを示唆している。