
日本の超長期金利が上昇する中で、為替市場では「円金利上昇による円買い」という見方が散見される。しかし、こうした解釈は政府債務への懸念や対外経済構造の変容を無視した短絡的な見方である。金利上昇の真因とそれが円売り要因となる背景を構造的に読み解く。(みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト 唐鎌大輔)
「円金利上昇で円買い」論の
浅はかさ
日本の超長期債市場に強いストレスがかかり続ける中、長い期間を中心とした円金利が上昇、高止まりしている。
こうした中、為替市場では断続的に円高が進行しており、「円金利上昇を材料視した円買い」という解説も散見されている。この点、筆者は全く同意できない。
仮に長年指摘されていた政府債務への懸念が日本の超長期債市場に表れているのが現状だとすれば、その市場における売買取引の主たるプレーヤーである海外投資家の存在の観点から「日本売り故の円金利上昇」と解釈するのが自然だ。その意味するところはどう考えても円買いではなく円売りである。
そもそも「政府債務への懸念で金利が上がっている状況で当該国通貨が買われる」という矛盾した構図はあり得ないため、「政府債務懸念を受けた円金利上昇」か「円金利上昇を受けた円買い」か、いずれかの解釈が本質的に間違っているはずである。
次ページでは、どちらが正しいのかを検証し、その背景を分析していく。