高齢労働者人口の増加が
若者の賃金上昇を妨げる

 そもそも、このような政策が持ち上がったのは、国内の様々な業界が深刻な人手不足に悩まされているからだが、労働者にすれば人手不足というのは悪い話ばかりではない。労働力の希少性が高まるので価値が上がる。そうなれば、普通は賃金が上がるからだ。

 その前に人手不足で企業がバタバタと倒れていくぞ、という人がいるが、それは低賃金労働を前提とした昭和のビジネスモデルを引きずっていることが原因だ。本来、「生産性向上」を掲げるのならば、経営者は、安い労働力をどれだけ確保できるかがキモみたいな考えは捨てて、高い賃金を支払っても経営が成り立つビジネスモデルをつくらねばいけないのだ。

 そういう意味では、今の日本は、何十年ぶりにやってきた賃金アップのチャンスのはずなのだが、現実はその兆しすら見えない。それどころか、低賃金はビタッとフィックスされ、仕事量だけは人手不足で増えていくという「過重労働」が当たり前になりつつある。

 なぜこういう異常事態が起きているのかというと、実は「高齢化社会」が影響している。

 2017年の労働力調査によれば、15歳から34歳という若い世代は2567万人いるうち就業者は1643万人だが、これに対して55歳以上の就業者は1941万人。中でも65歳以上は807万人もいる。

 若者の価値が上がらないのは、それを上回るほどの「高齢労働者」が市場に溢れているからだ。ちなみに、「高齢労働者」は10年前から268万人増。若者の就労者は10年前から276万人減っている。

 要するに、本来なら絶対数が少なくなって価値が上がっていくはずの若者の労働力に、「高齢労働者」がとってかわっているのだ。そのため、いつまでたっても賃金が上がらないで、労働者の高齢化だけが進行していくという悪循環を招いているのである。