新協定を法制化するには 、議会の批准が必要で、批准手続きは新議会が始まる来年1月まで行われない見通しだ。下院民主党は、米労働者の賃金保護強化など、労組が望む条項を盛り込むよう迫る可能性もある。

 新協定の法制化作業が停滞すれば、企業にとっては投資決定を行う上で、新たな不確実要素となる。また、トランプ大統領が進める中国などとの通商協議を阻害しかねず、米国が鉄鋼・アルミニウムや中国製品に対して発動している関税を巡る対立を長引かせることになりかねない。

 下院民主党はさらに、議会の主要委員会の監視権限を行使して、トランプ政権が進める規制緩和も阻止する公算が大きいとみられている。

 環境・業界団体などによると、トランプ政権が地球温暖化ガスの排出規制を緩和したことで、石油・ガスおよび石炭業界は多大な恩恵を受けている。また、自動車業界も燃費規制の緩和で恩恵を受ける見込みだ。

 だが下院民主党は、委員会の委員長ポストを握ることで、調査の開始や書類提出の要請のほか、企業幹部に議会証言を義務づけることが可能になり、トランプ政権の規制緩和への取り組みを停滞させることになりそうだ。

 金融機関は、共和党が進めてきた米金融規制改革法(ドッド・フランク法)の見直しを支持しているが、今後は下院民主党からの追及に直面しそうだ。民主党は一段の金融規制緩和に歯止めをかけたい考えで、金融監督当局の予算増額も要求している。

 民主党はさらに、法人税率を現行の21%から25%に引き上げるよう求めている。法案成立に必要な支持票は確保できないものの、予算協議の一環として交渉材料にするかもしれない。民主党はまた、ヘッジファンドやプライベート・エクイティ(PE)会社への増税を目指す可能性があるほか、海外で事業を展開し利益を得ている企業に関して、国際税制の見直しを唱えるとの見方も出ている。

 民主党は問題になっている薬価高騰についても、調査開始や製薬会社幹部の議会証言を要求し、国民の関心を一層高めることができそうだ。

 薬価の値上げ幅を制限したり、あるいはメディケア(高齢者向け医療保険)に対し、製薬会社と直接、価格交渉する権限を与える状況を政権内に作ったりすることで、薬価引き下げの立法化措置を求めることも考えられる。トランプ大統領は、薬価高騰に批判の矛先を向けているが、身内の共和党からは抵抗を受けており、民主党の要求を受け入れることもあり得る。

 一方、医療保険制度改革(オバマケア)撤廃に向けた共和党の取り組みは、下院を民主党に奪還されたことで、下火になるだろう。 その結果、医療保険会社には一段の安定をもたらすかもしれない。共和党は、オバマケアの基準を満たさない医療保険の販売拡大を目指しているが、民主党はこれに反対している。

 一部では、トランプ大統領は、インフラ投資拡大で下院民主党と歩み寄ることが可能との指摘も出ている。シティバンクはインフラ整備により、2020年の実質経済成長率が約0.2ポイント押し上げられると試算している。