先週、大阪(大阪市)と三重(松阪市)で講演をしてきた。おかげさまでいずれも満員御礼だったが、セミナー主催者のみなさまや参加者の方々との交流で、それぞれの地区の社会貢献熱のようなものを確認できた。今回はそのことを元に、大阪、松阪で起きている、社会貢献をテーマにしたユニークな地域活性化の取り組みをご紹介する。

大阪をソーシャル・ビジネスの一大拠点に

 まずは大阪。5月17日(木)16時から、大阪の梅田スカイビル・タワーイーストにある「うめきた先行開発区域PRセンター」にてセミナーが開催された。テーマは「企業の成長戦略としての社会貢献」。最近の筆者の定番ネタだが、正直に言ってドケチ、というか実利主義をもって知られる大阪で、このような「坊さんの説教」みたいなテーマでどこまで人が集まるか心配ではあった。

 しかし、平日の夕方という、人が集まりにくい時間帯にもかかわらず、定員80名の会場は満席。参加者も大阪を代表する企業の人たちが大半で、セミナー後は参加者の約半数と名刺交換した。大反響のセミナーでも、これだけの参加者と名刺交換することはめったになく、一昨年に筆者が初めて「儲かるCSR」の概念を披露して大きな共感を得たとき以来の名刺交換率だった。それだけ大きな共感を得られたということで、「成長戦略としての社会貢献」はもはや、全国区的なテーマであることを実感した。

 セミナーの主催は「SIOネットワーク」という、大阪でソーシャルビジネスに関心を持つ人たちの集まり。SIOとは、Social Innovation Osakaの略である。協力に電通、後援として株式会社ナレッジ・キャピタル・マネジメント。両社にもご協力いただいたのだが、実はいま、この三者が協力して「大阪をソーシャル・ビジネスの一大拠点にしよう」という動きがある。

 現在、大阪・梅田で「うめきた・グランフロント大阪」という大規模開発が進行中で、2013年春に完成・オープン予定。オフィス、商業施設、ホテル、マンションが複合する大規模施設で、JR大阪駅隣接という超便利な一等地に出現する。このグランフロント大阪の中核施設として位置付けられているのが『ナレッジキャピタル』である。

 「世界をおもしろくする知の空間」というコンセプトだが、シアター、カンファレンスルーム、オフィスなどの設備のほか、コワーキングスペースとしてのサロンも開設される。このナレッジキャピタルを、大阪のソーシャルビジネス、ソーシャルイノベーションの拠点にしようという動きが、前述の三者によって構想されているというわけだ。

 実現すれば、東京にもこれだけの規模と利便性をもったコワーキングスペースはないわけで、大阪が日本のソーシャルビジネス最前線に躍り出ることも十分に期待できる。筆者も関西人なので大阪、そして関西の興隆は大いに期待している。