書店のがん関連コーナーには「この食べ物でがんが消えた」「余命数カ月のがんを克服した食事」など、“食事療法でがんが治る”ことをうたった書籍が所狭しと並んでいる。

 インターネット上の通販サイトでも、がん書籍の売り上げランキングの上位に食事療法関連の書籍が入っていて、このテーマがいかに患者の注目度が高いかをうかがわせる。

 「1~2カ月に1回は、食事療法をやっているという患者さんに遭遇する」と話すのは、国立がん研究センター中央病院消化管内科の加藤健医長。がんと告知されたとき、患者の多くが考えるのは「なぜ自分が?」ということ。その理由として、真っ先に思い至りがちなのが、がんになる前の生活習慣だという。

 がんに効くといわれる食事療法には、肉を断って野菜中心とか、乳製品や砂糖が入った高カロリーのものは食べないなど、とにかく我慢を強いるものが多い。

 「患者さんにとって食事療法は、過去の不摂生に対する“贖罪”に近いものがある」(加藤医長)

 冷静に考えれば、聖人君子のような生活を送ってきた人などほとんどいないはずだが、がんと告知され、自分の死と向き合わざるを得なくなったとき、人はこのような心理状態に陥りがちになる。