日本の超富裕層は事業、資産継承で
資産管理会社を活用

 巨万の富を築いた超富裕層が何より腐心するのが、資産の継承である。

 ここ数年来、国税当局は立て続けに彼らへの締め付けを強化してきた。2014年には、5000万円超の海外資産の保有者に対して調書の提出を義務付けた「国外財産調書制度」がスタート。翌15年には海外移住の際に1億円以上の株式など金融資産の含み益に課税する「出国税」が導入された。これにより、海外で節税する効果が大幅に薄れたとされる。

 さらに16年に運用が始まったのが「財産債務調書制度」。年間所得が2000万円超で、総資産が3億円以上または有価証券などを1億円以上保有する富裕層に調書の提出を義務付けた。昨年には、「5年超」海外に居住すれば国外財産の相続・贈与税がゼロになるルールが「10年超」に見直されてしまった。

 いよいよ包囲網が狭まる中、今なお超富裕層が重宝しているのが、資産管理会社を使った節税スキームだ。資産管理会社とは、同族企業のオーナー社長などの資産管理を目的として設立される会社のこと。オーナー社長は資産管理会社に創業した会社の株式を購入させ、その資産管理会社の株式を保有する形で経営に関与するのだ。

 ここからは具体的な仕組みを見ていこう。

 まずは法人税だ。「上場企業のオーナー社長の資産の多くは自社株だが、個人が発行株式の3%以上を保有すると、配当金を受け取る際の課税が配当課税(税率20%)から総合課税(最高税率55%)になってしまう」(資産管理会社の運用担当者)。それを防ぐために資産管理会社を設立し、そこにオーナー社長の保有株の大半を移すことで、税率の高い総合課税を避けることができるのだ。

 さらに、資産管理会社が一定以上の株式を保有すると、受け取った配当金が「益金不算入」(売り上げとして計上しなくてOK)の対象となり、ここでも節税効果を享受できる。

 もちろん相続でも効果を発揮する。資産管理会社が不動産の購入や航空機のリースで自社の評価額を圧縮。価格が下がった資産管理会社の株式を後継者が相続すれば、上場企業の株式を相続するよりも相続税を軽減できるというわけだ。