現社長の松本氏が後継経営者として東京ビル整美に入ったのが9年前のこと。歴史も実績もある会社だったが、昔のままのスタイルで安穏とする社風、受け身で惰性的な社員ばかりという実態に直面。生き残れない危機を感じ、就任早々からドラスティックに組織をつくり変えた。今期は過去最高の売上を達成しそうだ。

17時で空っぽになる会社をどう変えるか

東京ビル整美株式会社社長 松本房人氏

 私が当社に入ったとき(2000年)と今で、会社データのいくつかを比較してみますと、社員数は50名から38名と若干減少、平均年齢は53歳から43歳へ10歳若返り、平均勤続年数は15年から7年に半減となっています。

 この数字だけから判断すると、会社の規模が小さくなり社員の定着も悪くなり、企業としては後退しているかのように見えなくもないですよね。

 しかし一方で、以前は官庁からの仕事が70%だったのが、今は民間からが70%と、まるっきり反転しています。そして、これこそ私が狙い期待していたところなんです。

 当社は長く官庁の仕事がほとんどだったことから、「請負気質」が強く、変化や進化を求める社風が希薄でした。そして17時になったとたん会社のなかはあっという間に空っぽ。そんな環境でした。

 しかしコスト競争も厳しくなるなか、「官庁頼みで何とかなる」時代がずっと続くとはとても考えられませんでした。それなのに「今のままで充分」という空気が社内に蔓延している。これは危険です。ですから、民間営業に強い企業体質に大きく舵を切り変えようとしたんです。

 まず始めたのは、全社員と顔を向きあわせて一人ひとりと話し合いの場を設けたことです。

 その内容は、[1]社員が日頃どんな仕事をしているのかを自分自身で整理して説明できるようにすること、[2]そして今後個人としてどのような形でどんな目標設定をしていくのか、[3]最後に、会社がどういう方向を向こうとしているのか、そのなかでその社員に求めていくことは何か。

 そういう現状や課題を、私と社員が1対1で摺り合わせる機会を継続的につくったのです。