この不正問題の真因を、トヨタ流の5回以上の「なぜ?」で探っていくと、どの会社でも最後はトップの普段の姿勢や社員に対する接し方に辿り着くはずである。会社の風土や雰囲気をつくり出す大本は、トップの姿勢にあることが多いからだ。
80年余にわたるトヨタの歴史の中に、威張り散らすだけの経営者は見当たらない。歴代のどの経営者も、自らへの批判を謙虚に受け止める姿勢を持っていたし、そうした経営者としての根本姿勢を他の役員や現場の管理者にも自然に伝播させていったことも容易に推測できる。
部下に厳しい人は大勢いたが、それは問答無用に威張っていたのではなく、「カイゼン」を徹底するために厳しい物言いをしたのだと考えている。
トヨタの経営者をほめすぎではないかと感じるかもしれないが、トヨタの労使に相互信頼が生まれ、それが根付いた背景には、こうしたトップの姿勢があることを見過ごしてほしくないゆえの記述だと思っていただきたい。
これは、トヨタが世界一の自動車メーカーになれた背景でもある。すなわち、会社の総合的な力はトップと社員の関係性が大いに影響し、間違いなく業績を大きく左右するのである。
結果を大きく左右する
上司と部下の関係
トップと社員との関係は、職場の管理者と部下との関係に置き換えることができる。
管理者が部下を信頼し、部下は管理者を信頼する。この関係性を築ければ、部門全体の力は自ずと上がっていく。
難局に直面しても、メンバーみんなの力、すなわちチーム力で乗り越えることができる。とてつもなく高い目標であっても、チーム力で達成できるのである。トヨタが世界一を達成したように。
逆も真なり、である。
部下が上司を信頼できず、上司も部下を信頼できない関係性の中で仕事をしていたら、高い実績を上げることは到底できない。高い目標どころか、低い目標だって達成できない。部門の目標も個人の目標も達成できない。