そうした「相互不信頼」の関係から生まれるのは、上司のパワハラであり、部下同士の傷のなめ合いやグチの言い合いである。
いや、まだある。いちばん怖いのが、不正であり、虚偽報告であり、ミスをしても報告をせずにやり過ごすことである。上司にとって、また会社にとって恐ろしいことはここから始まるのだ。
上に立つ者が、下の者からの批判を許さない雰囲気を持っていたり、パワハラまがいの言動を日常的に放っていたら、ミスを報告したくない気持ちになるのは必然のことである。小さなミスも、大きなミスも、だんまりを決め込む風土ができてしまう。
ミスだけではない。部下はとにかく上司と話をしたくない、口をききたくない気持ちが充満しているので、改善提案などする気も起こらない。仕事や職場環境の改善アイデアが浮かんでも口にすることはなく、やがて前向きなことは何も考えず、ひたすら惰性で仕事をするのみになっていく。
これは、トヨタのカイゼン哲学とはまったく逆の成り行きである。
繰り返しにもなるが、トヨタは社風として、このようなネガティブな関係性を嫌い、仮にあったとしても何らかの形でそれを排する力が働くのである。