まず気付くのは、圧倒的な貿易黒字額を誇っていた中国の経常収支は黒字ではあるが、G20で4番目の規模にとどまり、収支が悪化傾向にあることだ。
経常収支は、「貿易収支」、旅行者の消費といったサービス取引の動向を表す「サービス収支」、対外直接投資や証券投資の収益などを含む「第1次所得収支」、途上国支援などに出したお金を示す「第2次所得収支」の四つから構成されている。
図は2017年で比較したものだが、実は四半期別で見ると、中国は18年1~3月に17年ぶりの経常赤字へと転落した。中国人海外旅行者の増加でサービス収支に含まれる「旅行収支」が悪化したことなどを受けた形だ。
これを見ても「貿易赤字は負けであり諸悪の根源」といったトランプ米大統領の考えには誤謬があるように映る。モノの取引のみを対象とする貿易収支では、世界中でお金がどこに流れているのかなどを見るには不十分だからだ。
その米国は貿易収支と同様、経常収支の赤字額の大きさが目立つ。直近の経常収支は過去10年の平均収支よりも悪化している。