新天地では順風満帆なスタートを切った。ベガルタ仙台との天皇杯全日本サッカー選手権4回戦で味方のゴールをアシストすると、J1初先発を果たした8月26日のヴィッセル神戸戦では、スペインのレジェンド、アンドレス・イニエスタの目の前で待望の初ゴールを叩き込んだ。

 続く同29日の清水エスパルス戦でも先発した久保だったが、マリノスが熾烈なJ1残留争いに巻き込まれた9月以降は出場機会が激減する。12月1日の最終節までにベンチ入りした8試合のうち、後半途中からピッチに立ったのはわずか3試合、プレー時間は40分にとどまった。

 FC東京時代と変わらない状況に再び直面した日々で、久保は自問自答を繰り返したのだろう。その過程で「なぜ試合で使ってくれないのか」という外向きのベクトルが、いつしか内向きのそれへと変わった。「自分には何が足りないのか」――17歳に生じた変化は、久保のこの言葉に凝縮されている。

「サッカーはチームスポーツなので、オレが、オレが、というわけにはいかない。選手1人ひとりに特徴があるとは思いますけど、チームの勝利が最優先される中で、土台となるチームのコンセプトを実践できなければ試合に出られないのは当たり前であり、その上で攻撃では自分の特徴をしっかり出して、チームのいいアクセントになればいい、ということをこの1年間で、十代の早い段階で学べたことは一番大きな収穫だと思っています」

期限付き移籍という“旅”で、
メンタル面は一回り大きく成長

 マリノスへ飛び出す直前の久保を、あらためて振り返ってみる。主戦場としていたポジションは[4-4-2]システムのサイドハーフ。ガンバ大阪を率いて国内三冠を独占した2014シーズンを含めて、長谷川監督が掲げる堅守速攻スタイルは、左右のサイドハーフが生命線を担ってきた。

 求められたのは絶え間なく上下動を繰り返し、守備面では泥臭いハードワークを厭わず、その上で攻撃面においてチームへ違いをもたらすこと――FC東京U-23を率いていた安間貴義監督(現トップチームヘッドコーチ)は、J3でプレーしていた昨夏の久保をこう表現していた。

「トップチームのサイドハーフは、強度がものすごく高いプレーをしなければならない。長谷川監督の下で今、建英は守備の基本を教わっています。トップチームでなかなか試合に出ていないので、どうしたのかと思う方もいるはずですけど、彼は確実に強くなっています。もうちょっとだけ待っていただけると、恐らくJ1でも再び出られると思っています」