顧客の要望を書きためたメモが
開発のヒントに

 07年。何とかして話を聞いてもらいたい、という思いで宮井は「実は自分はエンジニアなんだ」と口にした。すると、店舗担当者の態度が一変する。

「おまえはエンジニアなのか。それならば言いたいことはたくさんある」。今のカメラに対しての不満やこんな写真を撮りたいのにできないといういら立ち。将来のカメラはこうなってほしいという夢まで、ありとあらゆることがぶつけられた。

 何とかしてこの要望に顧客が驚くようなすごい答えを返してやりたい。宮井は夢中でメモを取りためた。

 宮井が06年から3年間米国を行脚して分かったのは、「顧客が、自分の資産でもあるマウントを変えて他社のカメラに乗り換えるには高い壁がある」ということだった。

 圧倒的にシェアの差がある競合の一眼レフメーカーと同じやり方をしていたのでは、太刀打ちできない。顧客自らがその壁を破ってソニーを選んでくれるためには、圧倒的な優位性がないとダメだ――。宮井はそう痛感した。

 当時のαに寄せられた「重い、大きい」という声。かつて書きためたメモを見ながら、圧倒的優位に立つために一体何をすればいいのか、考えに考えた。そして出た答えが、社内にCMOSイメージセンサーの開発部隊を持つという技術的な強みを最大限に生かして、一眼レフをフルサイズセンサーでミラーレス化することだった。