「失敗」と「揉めごと」を大事にする理由

本荘 あと、僕が気になったのは失敗や弱みに対する男女の意識の違いです。本のなかにもこんなくだりがありました。

『そのとき私は、リーダーとしての自分の仕事は、周囲を支えることだけではないと理解した。弱さを恐れないことも、リーダーの役割なのだ。メンバーに自分をさらけ出してほしいなら、私自身がさらけ出さねばならない』
『離職率75%、低賃金の仕事なのに才能ある若者が殺到する奇跡の会社』P266)
超人気私立女子校が奇跡の会社から学びたいこと本荘修二(ほんじょう・しゅうじ)
『離職率75%、低賃金の仕事なのに才能ある若者が殺到する 奇跡の会社』監訳者 新事業を中心に、日米の大企業・ベンチャー・投資家等のアドバイザーを務める。多摩大学(MBA)客員教授。Net Service Vetures、500 Startups、Founder Institute、始動Next Innovator、福岡県他の起業家メンター。BCG東京、米CSC、CSK/セガ・グループ大川会長付、投資育成会社General Atlantic日本代表などを経て、現在に至る。『エコシステム・マーケティング』(ファーストプレス))など著書多数。訳書に『ザッポス伝説』(ダイヤモンド社))、連載に「インキュベーションの虚と実」「垣根を超える力」などがある。

男性リーダーって、弱みや失敗をなかなかさらけ出せない人が多いですけれど、クリステンさんは自然にできちゃうタイプ。実際に女性起業家の卵を育て、ご自身も女性リーダーである漆さんから見てどう思いました?

 そうなんですよね。私自身、若い時は失敗したら周りの人に頼ったり、意見を聞いたりして乗り越えてきました。だからすごく彼女に共感しましたよ。人に弱みを見せたり助けを求めたりできるのは、若さの特権でもありますよね。

本荘 弱みを出せることが強みになるわけですね。

 そうそう。本校もそこは意識していて、日ごろから「失敗」と「揉めごと」を大事にしています。以前、制服のソックスをリニューアルするプロジェクトで生徒たちがみんなの意見を聴く会を開いたんですね。ところが忙しい昼休みにやったものだから、人数が集まらなかったんです。

「ちゃんと告知したんだから責任は果たしたんじゃない?」という声もあった一方、「ちょっと待って。そもそもの目的って何だっけ?みんなが来られない時間に設定したのが間違いだったんだから、謝ってもう1回やろうよ」という意見が出てきて。こんなふうに何かがうまくいかなければ、問題をオープンにしたうえで本来の目的をみんなですり合わせ、その達成に向けてチームで問題解決するという風土は、結構しっかり根づいている気がします。

本荘 失敗を受け入れあえる土壌がないと、なかなかできないですね。

 成功している女性リーダーも、本当は失敗を重ねてきているはず。ネガティブな感情を抱くこともあるでしょうし。「あんなことされて悔しかった」とか「許せない」とかね。プライベートではそんな本音も出ますが、講演や著書で言いにくいことはなかなか表に出てこない。
クリステンさんはメンタルが弱いところがあって、感情的にもボロボロになったりするのだけれど、この本ではそこをちゃんと書いているんですね。大人だけでなく、クラスや部活の人間関係で苦労している子どもたちが読んだら、すごく助けになると思いました。

本荘 たしかに子どもたち、とくに女の子にとってはいいロールモデルになるでしょうね。

 ストーリー形式なので感情移入もしやすいですしね。ティーンにはぴったりだと思います。思春期の女の子には父親を避ける子が多いんですが、お父さんが読んでから娘にプレゼントすれば、きっと、会話の糸口にもなりますよ(笑)。