小室 生産性を向上することで初めて、「重要度は高いけれど緊急度が高くない仕事」に気づき、手を出すことができるようになる。それを「コトフィス」や「大手町の湯」といった商品化までもっていったことが凄いですね。

 サーバホスティングサービス最大手のさくらインターネットさんでは、長時間労働を是正したところ、社員に余力ができ、それまでだったら「社員の負担になるから」と挑戦しなかった宇宙事業にエントリーしたそうです。そうしたら、その事業に魅力を感じた大手企業から優秀な人材が出向してきてくれたという、人材獲得につながっているそうです。

川端 やはり、時間的な余裕、それに伴う「考える余裕」がなければ、新しい仕事に手を出せないですよね。

小室 今、企業が一番悩んでいるのは人の採用であり、福利厚生で何をアピールできるかに苦心しています。そういった状況の企業にとって、自社で保育園を作る余力はなくても、「うちはコトフィスというサービスを契約しています」というだけで、採用の際に示せる魅力は上がります。お客様の本質的な企業価値を上げるサービスを提供できたというのが、すごいですね。

緊急時には労働時間を度外視
働き方改革に踏み出した背景

小室 ところで、そもそも働き方改革に着手するにあたって、問題意識はどのあたりから生じたのでしょうか。

川端 大きなポイントは、ビルの運営・管理という仕事上の特性です。安全・安心を十分に意識していても、どうしてもトラブルや事故に直面する機会もあります。そういった「緊急対応時には労働時間を度外視して解決しなければならないのだから、働き方改革なんて無理」という意識がありました。

 また、ビルオーナーから資産をお預かりして、資産価値や収益を向上させるのが我々の仕事なので、いわばオーナーの代行的な立場です。とはいえ、その先にはテナント、ビルを利用されるお客様がいる。オーナーとテナントの意向が合致しているときはいいのですが、やはり利害が対立する場面があり、それを個別に調整して解決していかなければならないため、「残業は当たり前」というムードが定着していました。