ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が掲げる国防費増大は、貧しいこの工業都市ニジニタギルには追い風となるはずだった。ここは第2次世界大戦でドイツ・ナチス軍の装甲車を撃破した重戦車の製造で知られる街だ。だが、デニス・モロゾフ(29)さんのような溶接工らの間では、こうした期待は萎(しぼ)んでいる。モロゾフさんの月給は550ドル(約6万円)で、4年前から変わっていない。残業を入れても、老朽化した国産車「ラーダ」と1日1箱の喫煙をなんとか維持できる程度だ。 モロゾフさんは「これだけ苦労してお金を稼ぐと、すべてが高価に感じる」と話す。欧米諸国による制裁に加え、民間経済の改革よりも国防費増大を優先する政府の方針により、ロシア経済は打撃を受けている。その痛みをますます背負わされているのが、ロシアの労働者階級だ。