レビュー
東京は明治維新以降、常に変化を続けてきた。バブル期までは東京全域がより便利になり、地価が上がるという恩恵にあずかれていた。だが著者の中川寛子氏によれば、近年ではその変化に地域格差が出ているのだという。バブル期のピークと比べると、2018年の東京の住宅地の平均単価は半分以下だ。そのなかでも都心とそれ以外で格差ができつつある。
本書『東京格差 浮かぶ街・沈む街』はいまの住宅観・住宅街観が生まれた背景を解説しつつ、これからのまち選びのあり方を提示する。著者が疑問を投げかけるのは、「閑静な住宅街」「職住分離」「住みやすいまち」「東京は冷たい」そして「大都市だから」という、5つの常識についてだ。そもそも日本の古くからの伝統のように語られる「専業主婦」や「長距離通勤」の文化は、比較的新しいものとされている。これまでの住居の選択には、こうした価値観が大きく影響を与えていたが、働き方が大きく変わり、人口減少が予想される現代では、まち選びの基準も大幅に変わることになるだろう。