前回、ディズニー・リサーチの「Touché」(トゥーチェ)の「魔法」について書きました。

 ディズニー・リサーチは、ディズニーが3年前に創設したITの最新テクノロジーを中心とする研究機関で、本国アメリカはもとより、日本からも貴重な「頭脳」がヘッド・ハンティングをされていたようです。

 その中の一人に、佐藤宗彦さんという方がいらっしゃることが、分かりました。東京大学の機械工学の教授であり、ITと人間の動作などを結びつける研究で著名な廣瀬通孝先生の研究室に所属されています。

 私の同僚のキシモトくんの東大時代の同級生に、廣瀬先生の研究室で佐藤さんの先輩にあたる人がいることから、先日、研究室の方にお邪魔してきました。

 そこで、ディズニー・リサーチのあれこれや、Touchéについて、いろいろとお話を伺いました。

 このTouchéですが、ディズニー・リサーチのサイトを見るとわかりますが、ワシントン・ポスト、FOX、フォーブス、テック・クランチなどなど、少なくとも50以上のメディアで報道され、絶賛されています。

 また、HCI(Human Computer Interaction、人間とコンピュータのコミュニケーションについての研究)では、今年の5月に米国のテキサスで行われた「CHI2012」という世界最大のイベントで、なんと大賞を受賞されています。その賞状の一番上には、「Munehiko Sato」と書いてあり、Touchéのすごさを改めて実感します。

 Touchéについては、前回、その概念と機能(人が何かを触った時に流れる静電気のパターンの違いを認識し、そのパターンによってコンピュータを操作する技術)について、比較的詳しく書きました。

 例えば、「つかむ」「一本指で触る」「二本指で触る」といった「触り方の違い」で、コンピュータの動きを制御することが可能となっています。

 でも、これも同じく前回紹介した「LEAP(リープ)の方がすごいんじゃないか」と言う声をたくさんいただきました。

 もちろん、LEAPはすごいです(キネクトなど従来のモーション・キャプチャーの200倍の精度ですから)。

 でも、Touchéも、これほど、世界中から絶賛されているだけあって、やっぱり、すごいです。

 これのどこがすごいかというと、マウスやキーボード無しのコンピュータの制御を、これまでとは全く異なる概念で実現しているというところだと思います。

 これまでの技術は、人間の動作をコンピュータに認識させるために、「何かに自分の動きを見せる」必要がありました。