働き方改革関連法が4月より施行され、従来は企業内に留まっていた人材がより幅広いフィールドで活躍することが期待されている。個人の転職へのハードルも年々下がり、国内の人材流動化が進められる一方で、研究・開発職をはじめとする未来のイノベーションを担うはずの高度専門職における人材と企業とのマッチングは進まず、採用難を迎えているという。高度専門人材の採用に、何が起きているのか。(取材・文/福田さや香+YOSCA、企画編集/FIREBUG+武田 鼎)
高度な専門知識を持ちながら
希望の職に就けない
ロボット設計技術者の大阪拓真さん(30歳)は、大学で機械設計を学び、ロボット製作サークルにも所属。大学院も合わせ約6年間、水中ロボットの研究に打ち込んできた。研究してきたロボット工学の知識を生かせる仕事を求め、23歳の時に技術者派遣会社に入社した。
「学生時代に専門知識を身に付けていても、入社1年目からロボット設計に携わらせてくれるメーカーはそうありません。やりたいことが明確になっていたからこそ、メーカーではなく、仕事を選べる派遣会社を選択しました」(大阪さん)
しかし働き始めてみると、実際に行う業務は機械の強度などの解析業務がメイン。いつまでたってもロボット設計業務は任せてもらえなかった。「ひとつのデータ解析作業が終わると、また別の解析を依頼されることの連続。どうしても『ものづくりをしている』という感覚が持てず、苦痛でした」(大阪さん)
結局、希望の仕事ができなかったことから27歳の時に会社を退社し、新たな就職口を探し始めた。大手転職サービスに登録するも「機械設計」ができる求人はほとんどなく、自身の専門性を生かせる会社は、簡単には見つからなかった。