アマゾンもAWSで利益を上げるまでは、借金をして赤字経営を続けながら投資を続けてきました。日本企業が、今のまま何にも投資せず、新たな取り組みも始めずにいれば、「貯金をしたまま死んでいく老人」と同じ状態に陥ることになるでしょう。

 日本企業がプラットフォームで世界的な成功を収めるには、例えば「製造業×サービス」という考え方で海外企業との資本提携やM&Aを積極的に行うことも必要となってきます。自社が培ってきた強みを生かしつつ、サイバーとフィジカルの融合を図り、他国のサービス事業を取り込むといったこともどんどんやるべきです。国内だけの小さな連携で「オープンイノベーションごっこ」をしていても、世界はとれません。

「e-Pallet」トヨタ自動車が2018年に発表した次世代電気自動車「e-Pallet」

 既に、MaaS(Mobility as a Service:マース)という、自動車などの移動手段をサービスとして提供する「移動のサービス化」の世界では、そうした動きが起きています。トヨタ自動車が2018年1月、米ラスベガスで開催されたコンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)で発表したコンセプトカー「e-Pallet」などは、まさに日本のメーカーがモビリティサービスに取り組もうとしている例のひとつです。

 e-Palletは、電動化、コネクテッド、自動運転技術を活用した、MaaS専用の次世代型電気自動車のコンセプト。低床・箱型デザインの3サイズの車両に、ライドシェアリング、ホテル、飲食、小売など、さまざまな仕様の設備が搭載できるという構想で、クルマを移動の手段としてだけではなく、サービスのプラットフォームとして提供しようというものです。彼らはモビリティの分野で、プラットフォーマーになろうとしているのです。

(クライスアンドカンパニー顧問 及川卓也、構成/ムコハタワカコ)