最初から汎用化された機能を用意するのは難しい――。では、どうすればプラットフォームをつくることができるのでしょうか。それは、1つの事業、またはごく少数の事業で確実に使えるものをつくることから始めること。初めはバーティカル(垂直)にサービスをつくっていくのです。

 現代は「モノ」から「コト」の時代になったといわれるように、全ての産業がサービス産業化してきています。そうした環境下では“ユーザー”のニーズが多様化しているため、把握が難しいのも事実です。これはプラットフォームの世界でも同様で、サービスの土台となる部分に求められる機能は多様化しています。

 つまり、全てのサービスのニーズを満たす、汎用化されたプラットフォームをつくることは難しい。だからプラットフォーマーを目指すには、初めは自社、または実際に事業を展開している会社と共同開発のような形で、1社のサービスできちんと使える土台を確実につくる必要があります。その後、ほかの少数のパートナーとも連携してみて、共通部分を見つけて横展開していくのが定石パターンです。

アマゾンとアップルも
最初からプラットフォーマーではなかった

 アマゾンの場合も、最初は自社で垂直に、全てのサービスづくりを行いました。結果としてできたのが、世界最大の本のECサイト「Amazon.com」です。ECサービスを自社で運営したおかげで彼らは、少なくともアマゾンと同じ「世界最大のECサイト」をつくるために必要なものは何かを知っています。そこから、他社でも使えるITインフラの部分を切り出して、AWSをつくったのです。最初からプラットフォームをつくろうとして、AWSをつくったわけではありません。

 実は、自社で垂直にサービスを立ち上げてから他社へプラットフォームを提供するというやり方は、アップルでも同じです。今や、さまざまなアプリ開発会社が、アップルの提供するSDK(Software Development Kit:ソフトウエア開発キット)を利用して、マーケットプレイスである「App Store」を通じてアプリを配信していますが、iPhoneが誕生したときにはアップル社製のアプリしかありませんでした。