投資の世界で最も危険な言葉は「今回は違う」だといわれる。原油トレーダーは今回の出来事を例外扱いにしたがるかもしれないが。中東のホルムズ海峡近くでタンカー2隻が攻撃されたのを受け、13日午前、原油先物は4%以上急騰した。ホルムズ海峡は世界の石油の約5分の1が通過する重要な海上輸送ルートだ。ここ数カ月に一連の比較的被害の少ない攻撃が発生し、イランまたはイランの支援を受けるイエメンの反政府武装組織フーシ派が行ったとされているが、原油相場はこれまであまり反応しなかった。非難の矛先は13日、イランに向けられた。そうなると1980年代中盤のいわゆる「タンカー戦争」との比較は避けがたいだろう。確かに類似点はある。当時は(今と同じように)原油相場がおおむね圧力を受けていた。相場は1979年にイラン革命を受けて高値に上昇したが、7年後の1986年には1バレル=10ドルを下回る水準まで落ち込んでいた。一方、12日の原油相場は5カ月ぶり安値をつけた。石油輸出国機構(OPEC)が報告書で、5月のOPEC原油生産量が5年ぶりに日量3000万バレルを割り込んだとの見方を示したにもかかわらずだ。相場低迷の理由は世界的な需要鈍化にあるとみられる。