原油をくみ上げるポンプジャッキPhoto:Reuters

――筆者のジョン・D・ストールはWSJのビジネスコラムニスト

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 ビッキー・ホラブ氏はエンジニアとして3つの大陸を渡り歩き、米石油大手オキシデンタル・ペトロリアムのトップに上り詰めた。合併・買収(M&A)の経験に乏しいホラブ氏は批判する側にとって、くみしやすい相手だった。

 ホラブ氏は最近、同業アナダルコ・ペトロリアムを380億ドル(約4兆500億円)で買収して、パーミアン盆地でシェール生産を拡大するという大胆な賭けに出た。この計画には、多大な調達コストがかかってもウォーレン・バフェット氏からの資本調達が欠かせない。アナダルコが望まないオキシデンタルの株主による投票を回避するためだ。

 投資家は計画に納得しておらず、今月1日夕方時点のオキシデンタルの株価は、アナダルコに初めて買収を提案した4月下旬比で15%安となった。そして誰より声高に不満を表明したのが、富豪でアクティビスト投資家(物言う投資家)のカール・アイカーン氏だ。アイカーン氏はホラブ氏を初心者扱いし、傲慢(ごうまん)なホラブ氏がバフェット氏に「ごっそりやられた」と断じた。

 確かにこの買収計画には、バフェット氏からの資金調達にかかる多大なコストや株主回避戦略、オキシデンタル株が原油価格下落の影響を受けやすくなることなど、疑問は多い。しかしホラブ氏が女性だからという理由でアクティビストからより厳しい追及を受けている可能性はあるのだろうか。

 これはデリケートな問題で、アイカーン氏からもホラブ氏からもコメントは得られなかった。筆者はこのテーマについて、現・元の女性CEO、アクティビスト投資家、機関投資家合わせて16人に取材を申し込んだが、公表を前提とした取材に応じた人はいなかった。

 最新の研究によると、アクティビストと衝突するリスクは男性CEOより女性CEOのほうが高い。アクティビストは機関投資家に対して影響力があり、取締役にとっては恐ろしい存在だ。だからこそ、女性CEOはアクティビストの脅威に立ち向かうための具体的な計画の策定にまっさきに取り組む必要がある。

 著名アクティビストで女性CEOとも対決してきたネルソン・ペルツ氏はCNBCに対し、「性別による差別はしない」と語った。ペルツ氏にとって興味があるのは企業が潜在能力を発揮しているかどうかだけだという。企業が期待に応えていたら口は出さないが、期待通りの成果を上げていなければ介入する。

 アクティビスト関連の問題を研究する投資銀行関係者によると、アイカーン氏もペルツ氏も、企業に対して行動を起こすかどうかを判断する際に、30余りの基準を検討している可能性があるという。「CEOが男性か女性かという点がそうした基準に含まれていることは絶対にない」