ダイヤモンド社の書籍編集局では、いま中途採用で編集者を募集しています(詳しい募集要項はダイヤモンド社の採用情報ページおよび「マイナビ転職」をご覧ください)。
そこで、近年ダイヤモンド社に転職してきた編集者たちに、職場の雰囲気、仕事内容、一緒に働きたい人材像などについてインタビューしました。ホンネ炸裂のトークをお読みいただき、我こそは!と思われた編集者の皆さまは、ぜひともご応募ください。応募〆切は「2021年5月31日(月)」です。
本記事では、ノンフィクション系翻訳書をつくらせたら国内屈指の編集者・三浦岳の、凝りまくり・粘りまくりの編集スタイルなどを紹介します。
(→他メンバーのインタビュー記事および座談会記事も是非お読み下さい!)

転職したいと思った二つのきっかけと
転職してみて驚いた二つの特徴

──最初に、ダイヤモンド社に転職しようと考えたきっかけを教えてもらえますか。

三浦岳(以下、三浦) きっかけは二つありました。まず、一緒に働いてみたい優秀な編集者がダイヤモンド社に何人もいたということ。いたというより、もともとの知り合いたちがダイヤモンド社に集まってきてたんですね。彼ら彼女らと同じ場で仕事をしてみたいというのが強くありました。

もう一つのきっかけは、その頃ビジネス書のベストセラー・ランキングに、常にダイヤモンド社の本が3〜4冊入っていたことです。となるとこれは、一人だけ優秀な編集者がいるなど属人的な強さではないのだろうと。いろいろな編集者の本が複数売れているということは、営業にも秘密があるのかなと思い、そこに興味を持ちました。

──入社は2014年ですよね。どんな本がランキングに入っていましたか?

三浦 『雑談力が上がる話し方』とか『統計学が最強の学問である』『伝え方が9割』『嫌われる勇気』などだったと思います。

──たしかにすべて担当者が異なる本ですね。では、実際に入社してから特徴的だなと感じたのはどんな点でしょう?

三浦 編集者の働き方という点では、刊行点数ノルマがないところですね。最近の出版界の状況だと、数を打ってまぐれ当たりをするケースはますます減ってきているように思います。なので、点数を絞って一点一点満足いくまでつくり込む編集スタイルを選べるのはとても合理的だと思いました。

点数ありきでつくっていると、あともう少し粘るべきところで、これくらいでいいかなと妥協する気持ちが出てきてしまう。でも、やっぱり粘ってつくりこむことが競争力になると思うんですよね。もちろん点数が少なすぎると売上が立たないので、そこはバランスを考えないといけないのですが、それも含めて任せてもらえるところがやりやすいです。

──刊行点数ノルマがないとだけ聞くと天国のようですが、売上金額のノルマはあるわけですよね。それはキツくないですか?

三浦 もちろん大変だと思うことはありますが、目標の売上が過度に高いわけではなく、やはりこれくらいは必要だろうというレベルなので納得感はあります。ただ金額が目標ということは、裏を返せばいくら本を出してもそれだけでは評価されないということなので、自分なりに点数と時間の掛け方のバランスを考えながら目標達成できるよう試行錯誤しています。

金額目標のことでもう一つ言うと、過去の担当書(6年分)の今年度売上も評価対象に入るのがありがたいです。ロングセラーをつくるインセンティブが働くし、会社にとっても個人にとっても理に適っていますね。

──たしかに、既刊書と関連する大きなニュースなどがあると、改めてオンライン記事をつくって販促を行う編集者も多いですよね。

三浦 そうですね。ダイヤモンド・オンライン内にある書籍編集局による情報サイト「書籍オンライン」を使えるということも、ダイヤモンド社の大きな強みだと思います。書籍編集者として、どうやって本の存在を告知するか、どうすれば有効なプロモーションができるかというのは、ずっと課題に思ってきました。ですからダイヤモンド社に入って、書籍編集者が「書籍オンライン」を使って自由に情報発信できるというのは、大きなアドバンテージに思いました。

──なるほど。「書籍オンライン」ですごく反響があったという具体例があれば教えてもらえますか?

三浦 たとえば『時間術大全』という本では、「グーグル社員が自分のスマホからGmailを削除したワケ」「即レスの人ほど『人生の損』が増えていくワケ」の2本の連続記事で、捕捉できるだけで700冊以上の売上がありました。私の場合、翻訳書が多いので、ほぼ本文からの抜粋で記事を作成します。読まれる記事にするためには、やはり素材である書籍自体にインパクトがあることも大事ですが、記事タイトルも重要です。そうしたタイトルの付け方についても、編集部内でノウハウが共有されているので助かっています。

最近は、ただ店頭に置くだけでは本の存在に気づいてもらえないという状況に拍車がかかっているように思います。そんな中でこうしたメディアがあり、編集者が自分の裁量でプロモーションに時間をかけられる環境というのは理想的に思います。

職場のカルチャーがきっかけで
人の意見も聞けるように

──ダイヤモンド社に入って自分の成長を実感する部分はありますか?

三浦 いちばん変わったと思っているのは「人の意見を聞けるようになった」ということです(笑)。私はダイヤモンド社に入る前も10年以上、書籍編集者として仕事をしてきたわけですが、「できれば、あまり人の意見を聞きたくない」というタイプでした。タイトルやカバーなどについても、最後に誰かにひっくり返されるのではないかと警戒しながらつくっているようなところがありました。だから、ダイヤモンド社では編集会議でかなり議論をすると聞いたとき、最初はちょっと面倒だなと思っていました。

──でも、徐々に考えが変わってきた?

三浦 はい。お互いに忌憚のない意見を交わすカルチャーが醸成されているんですよね。押しつけるわけじゃなくて、フラットに言い合う感じで。最後は営業でも上司でもなく編集担当者が決めるべきだということも強調されますし。最終決定権が自分にあるということさえ明確になっていれば、議論で出してもらえる意見は、すべて貴重な参考情報になるわけで。やはり自分の考え方に固執しているとワンパターンになってくるので、気負わずに他人の思考を取り込めるようになったことで、企画の考え方とか本のつくり方の幅が広がったように感じています。

──では、働きやすい職場だと思いますか?

三浦 私にとってはそうですね。どんな本をどんなペースでつくるかが任されていて、編集者がやりたいことを実現するのが正しいという思想が通底している。そこが働きやすさの根幹になっている気がします。自律的に考えられることこそが創造力につながると思うのですが、編集者の自律性をくじくことなく、自由に試行錯誤できる環境を維持しているところがとても魅力的だと思っています。

自分のパターンに引き寄せて
ヒット作を生み出す

──三浦さんの担当書である『シリコンバレー式 自分を変える最強の食事』『GRIT やり抜く力』『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』などは、それぞれが新たにビジネス系ノンフィクション書のイメージをつくってきた印象があります。そのあたりのこだわりについて聞かせてください。

ダイヤモンド社だからできる「凝りまくり・粘りまくり」の書籍づくり

三浦 ありがとうございます。2015年に出した『シリコンバレー式〜』は、実用書的な内容なのですが、ビジネス書のような体裁で刊行したことで、店頭でユニークなものになりました。

──たしかにこの本はビジネス書新刊に置かれてヒットしました。ビジネスと他ジャンルを越境していく流れを切り拓いた一冊ですよね。そこは意図してやったんですか?

三浦 最初から意図したわけではないんです。ちょうど食事とか栄養に興味があったときに、このマニアックすぎるほど食事の情報を詰め込んだ本に出会って、ぜひ日本で出したいと版権を取りました。しかしいざ日本で出すとなったとき、普通の実用書の雰囲気にすると、その道のプロの編集者がたくさんいる市場で埋もれてしまいそうに思いました。ならば自分が持っているパターンの延長でつくったほうが面白いことになるかなと。

自分自身、あまり実用書の棚に行くことはないですが、それでもこの本が話題書コーナーなどにあったら手に取るだろうと。そんな自分のような読者なら、どんな雰囲気であれば手にするだろうと考えて、少しビジネス書に引き寄せるようなかたちにもっていったんです。

『GRIT やり抜く力』も少し似ています。この本は心理学者が書いているので「心理」の棚に置くのが自然な気がします。でも内容を読むと、子育て中の親にかなり役に立つので、親向けにつくることもあり得ると思いました。さらには、ポピュラーサイエンス風にもっていってもおかしくない。そうやって迷った結果、自分ならどんな仕上がりであれば買うかと考えて、結果として、ビジネスの棚に置いてもおかしくないような雰囲気に仕上げました。

ダイヤモンド社だからできる「凝りまくり・粘りまくり」の書籍づくり

──その2冊と、『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』でもまたイメージが違いますよね?

三浦 『シリコンバレー式〜』のあとも、『一流の育て方』など、ビジネスパーソン向けに写真を使った装幀を、デザイナーさんにしてもらうことが多かったのですが、徐々にそうした装幀が店頭に増えてきました。そこで、ちょっと違う感じにしたほうがいいのかなという気持ちが出てきて、『父が娘に語る〜』では、文字だけで装幀してもらいました。文字主体だと難しげに見えがちですが、一部の字を大きくすればそこまで面倒くさそうには見えなくなる……というワザが使われています(笑)。

この本は装幀もさることながら内容も最高に面白いんです。翻訳書って思いもつかない人や企画に出会えるところが面白いところだと思うのですが、特にこの本は著者がギリシアの元財務大臣で、資本主義の歴史を200ページちょっとで一気に語るという、それだけですごく独特な本に思いました。しかもそれがヨーロッパでベストセラーになっていると。実際に読んでみると、政治家で学者なのに、文章にはサービス精神があふれていて、めちゃくちゃ面白く、わかりやすくて、驚きました。

ただ、邦題に関しては、営業部に救われた部分が大きいんです。最初、「これは次の『サピエンス全史』になる!」と言わんばかりにわーわーと言って企画会議にかけたのですが、営業部の反応がさっぱりだったんです。そのとき企画書に書いたタイトルは『娘よ、これが経済だ。』だったんですけど、「ふーん……」みたいな(笑)。興奮しているこちらが当惑されているような。読んだら面白いのかもしれないけど、このタイトルはピンとこない、と。

そこで、この企画書のような見せ方だと、本を出したときに店頭の読者がああいう反応になってしまうのかもしれない、と危機感を覚えました。それで、なんだかんだと迷ったあげく、結果として刊行したタイトルに行き着くことができたんです。

翻訳書編集の魅力と
アドバンスに対する考え方

──数々のベストセラー翻訳書を出していますが、翻訳書にとって大切なことや、その面白さを教えてもらえますか?

三浦 大切なのはやはり情報です。ダイヤモンド社には国内外の翻訳エージェントや海外版元と強いネットワークがあるので、世界中の本の情報が集まってきます。国際ブックフェアにも積極的に参加しています。ロンドンとフランクフルトのフェアには毎年必ず行きますね(※コロナ禍で現在はオンライン開催)。国際ブックフェアでは30〜40もの海外版元やエージェントとミーティングを重ね、これから出る本の情報収集をします。それ以外にも世界中の出版人が集合する機会なので、会食や立ち話を通じて世界の出版トレンドや企画について情報を集め、魅力的なコンテンツを見逃さないようにしています。

面白さとしては、やはり海外の多くの出版人と会ってコミュニケーションできることですね。編集者としてすごく勉強になります。しかも大量の企画に接するので、企画を見る目が養える。あらゆる企画が並ぶなかから取捨選択しなきゃいけないので、見るべきポイントを考えるようになりますね。

──売れる原書を見抜くためのポイントは何ですか?

三浦 一つは「こういう企画を、日本で出せたらいいな」といったアイデアを常に持っておくこと。そうすると、いろいろな海外の企画を見るなかで、こういう見せ方ができるかもしれない、と自分の持っているアイデアにあてはめられることがあります。日本語版の効果的な見せ方がイメージできる本であれば、そんなに失敗しないように思います。

あとはやっぱり著者ですね。フェアでの打ち合わせなどでは簡単な内容紹介と著者情報しかない場合も多いので、著者がどれだけ魅力的な人なのかをしっかり見ます。

それから意外と大事なのは、売り込む側の熱量です。権利者が強く推してくる本や、信頼できるエージェントの方が、これは面白い!と熱くなっている本は、前向きに検討するようにしています。

ダイヤモンド社だからできる「凝りまくり・粘りまくり」の書籍づくり

──翻訳書の権利を取るときには、アドバンス(原著者への印税前払い金)が発生します。人気書籍の場合はその額をライバル出版社と競うわけですが、ダイヤモンド社のアドバンスに対する取り組み姿勢はどう思いますか?

三浦 アドバンスの考え方は版元によってかなり異なりますが、初版で回収できるコスト設計で決める版元もけっこうあります。ただそれだと、競合があるような魅力的な本は取れません。

ダイヤモンド社の場合は、初版部数とはあまり関係なく、ここまでは売れる可能性があるだろうと期待収益をにらみながら金額を決める感じです。高額のアドバンスも編集者を信頼してOKが出ることが多いのでありがたいですね。もちろん売れないとまずいですが、慎重になり過ぎて大魚を逃すよりは、勝負すべきときは勝負しようと。その意味では、魅力的な大物タイトルを取って勝負してみたいという人にとっては面白い会社だと思います。

──では最後に、今回の募集でどのような人に来てほしいか教えて下さい。

三浦 凝り性の人、粘り強く考えたりつくったりするのが好きな人に来てほしいです。そういう人がいまのダイヤモンド社に入れば、きっと面白いことができるはずです。タイプはバラバラですが、ダイヤモンド社の書籍編集者には編集のことを突き詰めて考える人が多いので、日常的に本のことを話していても楽しいですし、編集に際してはいろんな意見が聞けて面白いと思いますよ。

(終わり)

※具体的な募集要項はダイヤモンド社の採用情報ページをご覧ください。また「マイナビ転職」にも詳しい情報が掲載されています。
※本記事以外にも、書籍編集部メンバーのインタビュー記事や座談会記事がお読み頂けます(記事一覧はこちら)。いずれも、職場の雰囲気や仕事内容を本音炸裂で語っています!