「あなたの職場は、なんでも“タダで”“自分たちで”解決していませんか?」
そう語るのは、これまでに400以上の企業や自治体等で組織変革の支援をしてきた沢渡あまねさん。その活動のなかで、「人が辞めていく職場」に共通する時代遅れな文化や慣習があると気づきました。
それを指摘したのが、書籍『組織の体質を現場から変える100の方法』。社員、取引先、お客様をうんざりさせる「時代遅れな文化」を指摘し、現場から変えていく具体策を紹介。「まさにうちの会社のことだ!!」「これって、おかしいことだったの!?」と、多数の反響があり話題に。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、「お金を使わせてもらえない職場」の問題点について指摘します。
コスト削減一辺倒でお金を使おうとしない組織
自分たちで意思決定する体験を得られない職場がある。とりわけ、組織のお金を使う選択や意思決定をしたことがない人も多いと、筆者は全国の職場を見て感じる。
とにかくコスト削減。1円でも安く進める。知恵を絞って、あるいはメンバーの気合い・根性で、なるべくお金を使わない方法を考える。
万が一にでもお金を使う場合は、100円の文房具を買うにも部長や社長の決裁が必要。
このように、お金を使うことを躊躇する組織は多い。
とりわけ日本の製造業はその発想が色濃い。「安くて、良いモノを、大量に」で成長してきた過去の体験を鑑みると、その合理性もわかる。結果、会社のお金を使ってコトを興した経験のない人が量産されてしまった。中間管理職でも会社のお金を使った経験がない人がいて驚く。
無理・無駄・無茶が常態化する
コスト削減一辺倒のマネジメントは副作用を組織にもたらす。なんでもかんでも創意工夫や自分たちの気合・根性でカバーしようとする。そのしわ寄せは現場のメンバーに来る。
長時間労働やサービス残業が当たり前に行われる組織文化、休めない組織風土、耐え忍ぶマインドセットに陥り、そんな自分たちをやがてみじめに感じるように。
職場や仕事に対するメンバーのエンゲージメントも下がり、離職が増える。または心身に支障をきたす人も出てくる。
その場の瞬発力で解決する力は養われるかもしれないが、長い目で見ると生産性は下がる。
投資して価値創造する経験や習慣が身につかない
能力のある人や有識者にお金を出してお願いすればすぐ解決するものを、毎度ゼロから考えようとする。自分たちで考える習慣を身につけるにはよいかもしれないが、すべてそれでは時間がかかる。
その組織の本来の価値創出に直結しない事務作業などの管理間接業務は、極力減らすか自動化したほうがよい。どうしても人手でやらなければいけない仕事は、お金を払って外注したほうが健康的である。
そうして本来業務や新たな知識習得やチャレンジに時間を割く。それができている組織とそうでない組織とでは成長格差は開く一方だ。「時は金なり」である。
かつ、お金を使う(払う)行為は社外とのつながり(共創)を生む。そこから新しい知識や価値観が流れ込み、つねにアップデートを続けていける。自組織だけで解決できない課題も解決しやすくなる。
なんでも自前で済ませようとする過度な内製主義は、社外の人たちとの共創を遠ざけ、課題解決や価値創造をも遠ざけるのだ。